自殺志願者を救う「いのっちの電話」の生音声動画を公開します

対話をすればラクになれる
坂口 恭平 プロフィール

声だけの空間

僕は建築家を志してきましたが、結局、地面に定着している建築物はひとつも設計しませんでした。

でも、僕は自分なりの空間をつくったつもりです。

それは声だけの空間です。人間の声が行き交うことで発生する空間。

「いのっちの電話」を、僕は一番欲されている公共施設なんじゃないかと思います。

役所だって、病院だって、必要かもしれませんが、「いのっちの電話」も同じくらい必要です。

もちろん、僕はただの素人です。医療関係者でもカウンセリングの資格を持っているわけでもありません。だからかなり無茶をしていることも確かです。

でも、僕自身死にたいと思うことがあり、しかも、医療の現場ではそういった経験者が、死にたい人に接するという機会はほとんどありません。だからこそ伝えられることがあるのではないか。

 

一見異変がないように見えても...

自殺に対する動きはまだとても小さいものです。ここまで自殺者の数が社会問題化しているにもかかわらず、人は健康であることが全てで、心に病を抱えていることはやはり今でも何か恥ずかしいもの、後ろめたいもの、人にはなかなか口にできないことになっています。死にたいなんて考えないほうがいい、と。

しかし、僕が感じている現実は違います。

何も問題がないように外から見える人でも、僕のところには「死にたい」と電話をかけてきます。まわりにそのことを一人も知っている人がいないと言う人もいます。とにかく、この事実から目をそらしたらいけないと思っています。

死にたいと思うことは何も悪いことではありません。僕の経験から言うなら、誰にでも起こりうることであり、生きている中でいたって普通のことですむしろ、それがない人を探すほうが難しいくらいです。

対話がなされなさすぎて、ないことになっているだけです。必要なのは、対話ができる場所をつくること。ただし、目に見えるところにつくってもなかなか集まりにくいのが現状です。

目に見えない場所。でも確実にある場所。いつでも繫がる場所。対話が繰り広げられる場所。

そういう場所をつくりたいと思って「いのっちの電話」をはじめました。だから、やめるわけにはいかないのです。