10月11日 白川英樹のノーベル化学賞受賞が発表(2000年)

科学 今日はこんな日

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2000年の今日、スウェーデン王立科学アカデミーにより、筑波大学名誉教授の白川英樹(1936-)博士がノーベル化学賞を受賞することが発表されました。

報道陣からの質問に答える白川英樹博士(右) Photo by Getty Images

白川博士の受賞理由は、「導電性高分子の発見と発展」です。「高分子」とは、共有結合によってたくさんの原子がくっついた大きな分子のことを言います。高分子の例としてはセルロースやDNA、人工的なものではビニールやプラスチック類が挙げられます。

そして、「導電性」とは、電気をよく通すという意味です。金属に共通してみられる性質としてお馴染みですね。

したがって、白川博士の受賞理由を簡単にいえば「電気をよく通すプラスチックの発見」ということになります。しかし、ビニールやプラスチックが電気をよく通すと言われても、実感がわかない方が多いのではないでしょうか。

 

化学界でもかつては、高分子に導電性を持たせることは難しいと考えられてきました。しかし、中学校の頃から新しいプラスチックを作ることを夢見ていたという白川博士は、この難題に挑戦します。

そんな白川博士に転機が訪れます。1975年、化学者アラン・マクダイアミッド(Alan Graham MacDiarmid、1927-2007)の日本での講演会がありました。彼は、光沢を持つプラスチックを研究する人物がいるという話を聞きつけ、白川に会うことにします。

マクダイアミッドは、白川の持参した輝くプラスチックに驚き、アラン・ヒーガー(Alan Jay Heeger、1936-)を加えた3人での共同研究を持ちかけました。白川は快諾し、彼らはのちにノーベル賞を同時に受賞するに至ったのです。

共同で受賞したノーベル賞のメダルを持つ、右からマクダイアミッド、白川、ヒーガーの3人 Photo by Getty Images

実はこの輝くプラスチックは、白川が大学で教えていた学生の失敗がきっかけでできたとされています。ポリアセチレンというプラスチックの合成に失敗した際にできた膜を調べた結果、フィルム状で光沢のあるポリアセチレンの製法を発見したのです。

では、3人はどのようにしてプラスチックに導電性を持たせたのでしょうか。そもそも電気が流れるというのは、分子に含まれる電子が自由に移動できるということです。通常の高分子は共有結合していますから、構造が安定しており電子は動きません。

しかし、臭素やヨウ素などの不純物を加えるドーピングという手法を用いることによって、それらが電子を引き抜いてしまい、残った電子が流動するようになります。こうして、プラスチックに電気を流すことに成功したのです。

3人が発見した導電性高分子は、リチウムイオン電池や携帯電話のタッチパネルなど、多くの場所に応用されています。よく「失敗は成功の母」と言いますが、失敗から学ぶことを欠かさなかった白川博士の姿勢が、この偉業に結びついたと言えるでしょう。