平手友梨奈という「壊れやすい奇跡」に震撼し、涙する…「欅坂ドキュメンタリー映画」の凄み

62歳のコラムニストも感涙した
堀井 憲一郎 プロフィール

『不協和音』のビデオを見ていると、これは平手友梨奈だけを考えて振り付けられたように見えてくる。みんな同じ動きなのだが、途中から、他のメンバーは平手友梨奈の動きを真似しているように見えてくるのだ。

ただ、本当はそうではなく、平手だけがこの動きの本質をいちはやくつかみ、もっとも見せる効果的な力を出しているだけ、ということなのかもしれない。どっちなのかはわからない。

それぐらい、平手友梨奈の楽曲パフォーマンスに対する追い込みはすごい。

彼女は、『不協和音』という曲のもつメッセージを強く人に伝えるため、自分を追い込み、グループをそれまでの仲良し感から分断し別次元へと運んでしまった。そこまでして『不協和音』という曲を作ったのだ。

そして、そこまでしたからこそ、「いままさに身を賭して当局と戦っている香港の現場」に届いた。

活動家の胸に刺さった。ひょっとしてそのまま人生まで奪われてしまうかもしれないという不安のなか、活動家は「不協和音」の言葉に励まされ続けたのだ。

そのあたりは70年安保を前にしたフォークソングとは意味がちがう。あのころの反体制の歌は、戦うというよりも連帯を歌ったものが多かった。

いまはもっと個人は分断されており、個々で決意を固めて、個々で戦う意識を持たないといけない。そこには欅坂46の言葉が、平手友梨奈の強いパフォーマンスが、大きな意味を持ってくる。

 

「こんなことやっていたら、もたない」

平手友梨奈が、どんどん自分を追い込んでいくのが映画を見ているとひしひしとわかる。

舞台裏や、本番前の映像で如実である。

欅坂のセンターはもう無理だ、と身体が叫んでいるようで、本番前も本番後も、彼女がきちんと立っている姿は映し出されない。うずくまるか、誰かに支えられている。
それでいて、ステージに立つと、驚異的な動きを見せる。

こんな裏表を見せられれば、大人としておもうことはただひとつである。

「こんなことやっていたら、もたない」

でも彼女は踊り、歌っている。

ただただ胸を突かれる。彼女の存在を感じるだけで、それだけで何度も涙を流してしまう。

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