活動家の胸に刺さった曲
香港の活動家のアグネス・チョウ(周庭)さんが、当局に拘束されていたとき、ずっと欅坂46の『不協和音』の歌詞が浮かんでいた、と言っていた。2020年8月のことである。
欅坂46の言葉は香港の活動家の胸にまで届くのか、とそのとき少し驚いた。
『不協和音』は2017年に発表された4つめのシングルで、欅坂46の代表曲である。
去年、2019年大晦日の紅白歌合戦でも披露した。激しいパフォーマンスのあと、センターの平手友梨奈は倒れ、メンバーによって担ぎ出されていた。
そしてこれが、平手を真ん中においた欅坂46の最後のパフォーマンスになった。
不動のセンターだった平手友梨奈はその3週間後、グループ脱退を発表する。
その流れで、欅坂46そのものが終わることになり、2020年10月から「櫻坂46」として活動することになっている。
桜じゃなくて櫻だから、欅と並べると文字面が似ていて、そんなに大きく変えるつもりではない、という意志にも見える。
その欅坂46のドキュメント映画『僕たちの嘘と真実Documentary of 欅坂46』が公開されている。136分なのでけっこう長い。
なぜ『不協和音』は、香港の活動家の胸にまで刺さったのか。
このドキュメント映画を見ていると、その流れの一端が何となくわかる。それはそれで、見ていて少し苦しいものでもある。
欅坂46は、2015年に21人で活動を始め(46となっているが46人ものメンバーがいたことはない)、最初から平手友梨奈がセンターをつとめた。
平手は欅坂のシングル8曲のすべてでセンターをつとめている。
最初から圧倒的に平手友梨奈のグループであり、ずっと平手友梨奈のグループだった。
映画では、かつての平手友梨奈のインタビュー映像がいくつか挿入されている。いまから見るとずいぶんと初々しい平手である。「てち」と呼ばれるのがとても似合う愛らしさに満ちている。