東ドイツ人は過半数以上がいまだに「西ドイツ人よりも給料が低い」と感じている。地域差もあるはずだが、これは歴然とした事実である。
意識の差は40才以上と40才以下で明らかだ。つまり統一後、物質的には豊かになったものの、時代の波に取り残された人々がいるということだ。
無理もない。それまでの価値観が否定され、従事していた職場は消滅していった。社会主義時代は「失業」という概念さえ希薄であったのが、突如、仕事を失うことは「自分の責任」となり、別の職業につくための訓練を受けることを余儀なくされた。
また、東ドイツ時代は労働力が不足していたため、保育所や幼稚園が完備しており、男女平等は西ドイツより「進んでいた」といえる。
ところが、統一のために男女の共稼ぎが難しくなり、能力があってやる気のある人材は男女を問わず、西側へ引っ越していった。
かつて東ドイツ政府は労働力が不足することを恐れ、東から西への移住者を恐れたものだが、もはや将来の希望を持てずに西へ移住することを止めることはできない。東から西へ引っ越した人々は数知れず、東の州には、1905年時の人口しか残っていないという。
「血を流すことなくドイツ統一が果たせた」、「ドイツ統一は成功であった」とはいっても、東独人の心境は実際に東独人に聞いてみないと本音がわからない。