エリート・安倍晋三が「庶民・菅義偉」にハメられ完敗した全内幕

まるで角栄の「権力奪取劇」のようだった
戸坂 弘毅

衣の下の鎧がはっきり見えたのが、令和発表の翌月に菅が敢行した訪米だった。危機管理の要である官房長官が外遊すること自体、極めて異例であるうえ、これまで外交・防衛分野には全く関心を示してこなかった菅が訪米して副大統領や国務長官と会談したのだ。しかも、失敗と言われないよう「オール霞が関」に命じ、公式の日米首脳会談並みの約40人の分厚い体制でサポートさせたことが波紋を呼んだ。

その裏で、菅は「ポスト安倍」のライバルである政調会長の岸田文雄と、その岸田を推す構えを示していた副総理兼財務相の麻生太郎の力を削ぐための工作にも余念がなかった。

昨夏の参院選では、岸田の地元である広島選挙区で、自民党2人目の候補として自らの側近である元法相・河井克行の妻・杏里の擁立を主導。地元県連の猛反発を押し切って、創価学会やゼネコン等の票を河井に集中させ、岸田派長老である現職を落選させて岸田に大打撃を与えた。

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「岸田潰し」の策略はそれだけではない。岸田派の前会長で今も派閥に影響力を持つ元幹事長・古賀誠の政治資金集めに協力するなどして古賀を取り込んだ。古賀はテレビ番組などで「ポスト安倍は岸田でなくてもいい」「菅が望ましい」などと繰り返し発言し、岸田は求心力を削がれた。

さらに遡れば、前回2018年の自民党総裁選の前には、最後まで立候補するかどうか迷っていた岸田に苛立っていた安倍に対し、「岸田さんには立候補してもらったほうがいいのでは」と進言。安倍と岸田の離反を促してもいた。

一方、昨春行われた麻生の地元の福岡県知事選では、麻生と不仲の現職知事を古賀と連携して裏で支援し、麻生が擁立した自民党推薦の新人を大敗させて麻生に打撃を与えた。