去年、母と二人で暮らす家を探しに不動産屋へ行ったときのことだ。僕たちの隣には、幼い子供を連れたシングルマザーと思われる女性がおり、物件の内見をしようとしていた。不動産屋の店員は物件のオーナーに内見の許可を取るべく電話をしているのだが、そのとき発した言葉に驚いた。

「女性ですが、正社員の方なので問題ないです」

これがもしシングルファザーだったら、店員は「男性ですが、正社員の方なので問題ないです」と言っただろうか。立場は違えど、僕も老いた母を養いながら働いている身ではある。しかし少なくとも僕は、内見をする際に正社員であるかどうかを電話口で確認されることなどなかった。

まるで女性であることが問題であるかのようなこの言葉に、日本でシングルマザー、そして女性が置かれている状況がよく表れているのではないだろうか。

女性の問題はいつも後回し

僕も母子家庭で育った。幼い頃に父が愛人をつくり、僕が中学生くらいのときに彼は家を出てしまっている。そんな父がもらえる年金の受給額が、母のものよりもずっと高いことを数年前に知ったときは、なんて理不尽なんだろうと思った。

僕が生まれる前に仕事を辞め、一定期間のあいだ専業主婦だった母のほうが貰える年金額が少ないのは仕方がないのかもしれない。ただ、父は家を出て以降、生活費も養育費も一切払ってくれなかったのだ。家庭を捨て、何も痛手を負わず逃げ続けた彼が最後まで悠々自適に暮らし、全てを背負わざるを得なかった母が最後まであくせく働き続けるのかと思うと、怒りがこみ上げてきた。

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厚労省が平成28年度に行った「全国ひとり親世帯等調査」によると、養育費の取り決めを行った母子家庭で実際に支払いを受けているのは24.3%だという。こうした養育費の不払いの問題について今年7月、1カ月分の養育費を上限5万円、市が立て替える事業を明石市が始めたことが話題になった。この動きを受けて、法務省と厚労省も検討会を設置し、年内に論点をまとめることが報じられている。

この状況は喜ばしいことだが、養育費不払いの問題はずっと前から問題視されてきたことなのに、なぜここまで対応に時間がかかったのかと思わずにはいられない。バイアグラはあっという間に認可されたのに、経口避妊薬は認可まで何十年もかかったこともそうだが、日本では女性の問題はいつも後回しにされているように感じる。