最善の選択を解明する「意思決定理論」の考え方

全ては「パスカルの賭け」から始まった
川越 敏司 プロフィール

それぞれの「好み」を「公理」としてモデル化

意思決定理論では、この好みのあり方をいくつかの意思決定の「公理」という形でモデル化する。好みの違いを反映して公理が違えば、モデルも異なり、そこから導かれてくる「正解」も異なる。

これでは「何でもあり」の理論ではないか、とあきれてしまう方もいよう。もちろん、意思決定理論草創期の偉人たちは、唯一の正解を導く理論の構築を目指していたに違いない。しかし、そうして生み出された理論に矛盾が見つかり、それを解消するために新しい理論が構築される、ということを繰り返すうちに、やがて公理の数だけ理論があるというような状況になったのである。

しかし、これは理論の欠陥だとは思えない。むしろ、意思決定理論では多様な好みのあり方が許容されるということの方が健全だと思えるのである。

パスカルと同時代人のルネ・デカルト(1596〜1650)は『方法序説』において次のように述べている。

「われわれの間での意見の食い違いは、ある人が別の人よりもより理性的だからなのではく、ただわれわれが様々な道筋でその考えを導いているからであり、同じ事柄を考えているのではないからである」

ルネ・デカルト(1596-1650) photo by gettyimages

未知のウイルスへの感染という死と不安の影がつきまとう現代にあって、このような寛容の精神を持つこと、それが意思決定理論を学ぶ一番の意義なのかもしれない。

〈この記事は、PR誌「本」から作成しました〉

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