子どもたちの権利を奪ってしまわないように

今西さんは、学校での教育も重要だと考えている。子宮頸がんが増えている理由の一つに、初交年齢の低年齢化がある。また、子宮頸がんは、セックス(オーラルセックスを含む)によって感染し、コンドームでは完全に防ぐことはできない。

HPVワクチンは10代で接種することになるため、意思決定者は保護者または子どもになる。子ども自身が納得した上で選択できるようにするためには、子どもにも、HPVや関連する病気、予防ワクチンについての情報が必要だ。

「誰もが知るには、学校教育で教えるのがベストだと思っています。ですが、現状日本の学校では性教育がまともに行われていません。僕自身は以前から『コウノドリ』のモデルとなった小児科医ということで、学校現場で“命の授業”をやらせていただいています。みんパピ!の仲間には、学校で性教育を行なっている産婦人科医もいます。様々な機会を通じて、学校においても啓発活動を行なっていく予定です」

また、男児の保護者にとっては、男の子への接種も気になるところ。世界では、アメリカ、カナダ、イギリスでもなど、女子だけでなく男子への公的接種を導入している国も増えている。今西さんも、男性への接種は必要だと考えている。

HPVは性的な接触でうつり、男性の中咽頭がん、陰茎がん、肛門がんの原因にもなります。男の子が打つと、将来的ながんの予防になるだけでなく、パートナーへの感染も防ぐことができます。HPVは本当なら男性も打った方がいいワクチンです(※)」
※現在、男子が打つ場合には、定期接種の対象でないため自費になる。また、接種後に副反応が起きても補償や救済の対象にはならない。

今西さんは言う。
「子供たちの権利を守ることも、小児科医の使命です。私たちの強みは、小さい頃から予防接種を通じてそれぞれの家庭と積み重ねてきた信頼関係にあります。そして、子どもの健康を守るには女性の健康を、女性の健康を守るには男性の健康も守らなければなりません。

HPV感染症やHPVワクチンを知ってもらう取り組みは、次世代へとつながっていく取り組みでもあると信じています。HPVワクチンを、医療従事者だけが知るワクチンではなく、みんなが知るワクチンにしていきたいですね」

日本産婦人科学会、日本小児科学会、日本小児科医会は、国に対してHPVワクチンの積極的勧奨再開を求めているが、国の姿勢は「国民の理解が十分に得られていない」として曖昧なままだ。

世界に大きく立ち遅れている日本のHPVワクチン接種。まずは女子への接種、その先に打ち逃した女性へのキャッチアップ接種、男子への接種と課題は山積みだ。この状況を変えていくためにも、一人ひとりがこの問題を知り、国に対して「科学的根拠に基づく情報を出してほしい」「選択する権利を奪わないでほしい」と、声をあげていくことも大切だ。

いちばん大切なことは、みんなが知ること。そして、みんなで変えていくことなのだからー。

今回、著者の鈴ノ木ユウさんのご厚意で、漫画『コウノドリ』の13巻・14巻の「子宮頸がん」のエピソード(前編・後編合わせて,ナント218ページ!)を2020年10月1日~2020年10月7日23時55分​まで1週間の期間限定で、「無料試し読み」がご利用いただけます。

子宮頸がんとHVP(ヒトパピロマウイルス)、HVPワクチンについてエピソード内でわかりやすく解説されています。本記事と合わせて、ぜひご覧ください。

無料試し読みは、こちら