「接種の意味」を丁寧に伝えていきたい 

今西さんによれば、小児医療の現場では、保護者との間で『子どもに薬を飲ませる、飲ませない』といったやり取りは、普段からよく起きているそうだ。

「日本の産科施設では、赤ちゃんが生まれて数回授乳ができたら、ビタミンK2のシロップ薬を飲ませることになっています。これは、脳出血などを防ぐために行うのですが、中には『自然がいい』『添加物が嫌だ』と言って、飲ませるのを嫌がる保護者の方がいます。

そんなとき、『それはダメです』と否定するのではなく、『どうして飲ませたくないのですか?』『周囲の方はどう考えていますか?』など、一つひとつ丁寧に思いや理由を聞くようにしています。その上で、ビタミンK2シロップを赤ちゃんに投与するようになった背景やエビデンスをお伝えすると、お母さんたちは納得してくれることが多いのです。HPVワクチンの予防接種の際にも、同様の配慮が求められると思っています」

医療機関が「安心して任せられる」場所かどうかは、保護者にとっても子どもにとっても大きい。近年は、医療の現場も少しずつ変わってきている。予防接種を受ける子どもたちに対して、『プレパレーション』を導入する医療機関も増えている。

「プレパレーションとは、手術や治療を受ける子どもの発達特性を踏まえ、人形や絵本などを使って、治療の目的やこれから『起こること』をわかりやすく伝える取り組みのことです。これによって、子どもたちの泣く回数が減ったという報告もあります。

HPVワクチンは筋肉注射。もともと痛みが出やすいため、あらかじめ『ちょっと痛いですよ』と伝えておく。また、痛みや不安から一時的に失神する事例もあるため、ベッドに横になった状態で注射する。こうした配慮をすることで、予防接種を受ける女の子の心身の負担を、軽減することができるのです。接種後に起きた症状が出た場合にも、一人ひとり丁寧に診ていく姿勢が医療者側に求められます」

今西さんはこうも語る。
医療者がワンサイドに立たないこと、打たないという選択をした人を責めないこと、その人の価値観を尊重していくことも重要だと考えています。実はみんパピ!の活動の原点は、『コウノドリ』にあります。『コウノドリ』という漫画は、医療の様々な問題を取り上げながら、一人ひとりの多様な選択や価値観を尊重しながら描いています。そうした姿勢が多くの人たちに共感される理由だと思うのです」

漫画『コウノドリ』では、HPVワクチンの現実にも、さまざまな意見を取り入れ冷静に描かれている。(C)鈴ノ木ユウ/講談社『コウノドリ』14巻より