山口達也さんは「アルコール依存症の可能性が高い」…では何をすべきか?

「著名人自助グループ」につながってほしい
田中 紀子 プロフィール

そしてここからが重要なのだが、依存症は医療だけで治療が完結できるものではない。むしろ医療の役割は少ないと言える。

依存症は止め続けていく必要がある病気である。そのために重要なのは止め続けられる環境調整である。

入院中や場合によっては留置場、刑務所などの非日常的な環境で止められるのは当たり前で(入院でも止められない人もいるが)、大切なのは一般社会で日常生活をしながら止め続けることなのである。

ところが依存症というのは、脳に間違った回路ができてしまい、ストレスが溜まるとアルコール、薬物、ギャンブルなどその人がはまったものでしかストレス解消ができないという悪夢のような病気である。

だから止め始めのときなど、ストレスが多いに溜まりやすい状況にありながら、ストレス解消ができないという非常に辛い状態に陥る。

しかもこの一番しんどい時期が人によって違いはあれど決して短くない期間、平均的にみて2年くらいは続くのである。つまりこの最も辛い時期をいかに乗り切るかが鍵である。

 

このとき、重要なサポート役を果たすのが自助グループである。自助グループというのは大抵平日なら仕事終わりの夜7時とか8時くらいから開催され、土日は日中にも開かれている。

そしてこの自助グループで依存症者は、いっぱいいっぱいにまで膨れ上がったストレス、つまりネガティブな感情や、仕事や家庭で躓いている問題について分かち合い昇華させていくのである。

さらに自助グループの良いところは、「スポンサー」と呼ばれる、金銭授受のない無償のメンターのような役割を果たしてくれる先に回復した仲間が、グループ外でも話しを聞いたり、アドバイスなどをくれたり、サポート役となってくれる。

他にも一緒に回復を目指す仲間たちが、頭の中に次から次へと湧いてくる、恐れや不安、恨みや、罪悪感、嫉妬といった強い悪感情について話しを聞いてくれ、収まるまでつきあってくれる。

この病状の急性期とも言える時期に、無償でしかもいつでも寄り添ってくれる仲間がいることはやめ続ける上で非常に大きい。依存症は一人では回復できないと言われるゆえんである。

この自助グループに、山口さんにぜひつながってほしいと思う。依存症は別名「否認の病」とも言われ「自分一人でなんとか克服できるのでは?」と考えがちで、他人に自分の弱みや恥をさらけだすようなことはしたくないと思ってしまう。

しかし実は自助グループにつながる確率が一番高いのは「底つき」と呼ばれる、自分にとってピンチが訪れているときなのである。まさに今の山口さんは、自助グループにつなぐ最大のチャンスのときといえよう。

ピンチが訪れると、人は「ここから抜け出すためなら何だってやる!」という気持ちになるはずである。そのときに「試しに自助グループに行ってみたら?」とお勧めされたら、藁にもすがる思いで「行ってみよう」となってつながってくるのだ。

私自身も度重なる借金であまりの苦しさから「助けてもらえるなら何だってやる」という気持ちになり自助グループにつながった。山口さんには今こそ自助グループにつながる勇気を持ってほしい。周囲の方々は彼の背中をそっと押していただきたい。