鉄印がそろってくると、鉄印帳の中身はぐっとにぎやかになる。

なぜ開始2ヵ月で、三セク鉄道の「鉄印帳」が大人気となったのか

すべての鉄印を集めた人も続々登場
今年7月から始まった、全国各地の第三セクター鉄道に乗って「鉄印」を集めるという「鉄印帳」が、コロナ禍で大反響を呼んでいる。「鉄印帳」ブームの背景にあるものとは? 「鉄印帳」は経営難が常態化している三セク鉄道を再生させる一手となるのか? 旅行読売出版社社長​の坂元隆さんが解説します。
 

「三密」回避の旅のついでに

第三セクター鉄道40社が今年7月から合同で始めた「鉄印帳」事業が順調な滑り出しを見せている。

全国の三セク鉄道をめぐって「御朱印」ならぬ「鉄印」を集めようという企画で、すべての鉄印を蒐集した鉄道ファンは早くも15人以上も現れた。

「鉄」でなくても、「三密」回避を求めた旅のついでに鉄印を集めていく旅行者も多い。その大半が赤字経営で、「過疎」と「コロナ」の二重苦にあえぐ三セク鉄道各社は、危機脱出の手がかりになると新事業に熱い期待を寄せている。

鉄印は、神社仏閣でもらう「御朱印」のいわば「三セク鉄道版」。第三セクター鉄道等協議会(三セク協)加盟の三セク鉄道各社がそれぞれ指定した窓口で、乗車券を提示し記帳料(300円~)を支払って鉄印をもらう。

ただし、事前にいずれかの三セク鉄道の窓口で鉄印記帳専用の「鉄印帳」(税込み定価2200円)を購入しておくことが必要だ。

鉄印帳を広げたところ。ページごとに三セク鉄道40社いずれかの社名を記してあり、鉄印は該当する鉄道のページにもらう

鉄印帳は、四国巡礼のための御朱印帳を作っている印刷会社が作成したもので、御朱印と似たサイズの鉄印を40社分記帳することができるようになっている。御朱印同様、鉄印も各鉄道オリジナルの朱印に鉄道名や日付が墨などで書かれている。デザインは車両のシルエットや沿線風景をあしらったものなど鉄道によってさまざまだ。

「満願」には「鉄印帳マイスターカード」が

7月10日に企画がスタートして以来、鉄道ファンの間で瞬く間に情報が広がり、鉄印帳は当初用意していた5000部はたちまち完売となった。せっかく目当ての三セク鉄道まで出かけて行っても、鉄印帳を購入できないために鉄印をもらえないという事態まで発生した。

鉄印帳の版元であり、企画の黒子役として商標権も持つ旅行読売出版社では、1万部を増刷するとともに、これまでの紺色の鉄印帳に加え、「鉄女」を意識したピンクや、緑、黒など色とりどりの鉄印帳4種類も新たに出し、増え続けるニーズにこたえようとしている。三セク各社のロゴをプリントしたバッグやTシャツなど関連グッズの販売も検討中だ。

5つのカラーが勢ぞろいした鉄印帳。ピンクは女性に大人気

驚くことには、企画開始翌月の8月下旬に早くも、長期工事で鉄印をまだ発行していない阿佐海岸鉄道を除く39鉄道すべての鉄印を集めた人が出てきた。

「満願」を達成した人には、「鉄印帳マイスターカード」が発行され、旅行読売出版社の旅行サイト「たびよみ」に氏名が掲載される。マイスターは10月6日時点ですでに22人にのぼっている。

最初にマイスターとなった一人、福岡県久留米市の福本進さん(83歳)は「妻と一緒に久しぶりにいい旅を満喫できた」と、鉄印集めの魅力を新聞社のインタビューに語っている。