ラグビーW杯から都立高校へ?

公立の小学校に戻ると決めて、「なぜ私立じゃなくて公立なの?」とよく尋ねられます。恐らく私立校のほうが、さまざまなことを実行しやすい環境かもしれません。教育観や授業に関して学校のトップと一致していれば、様々なアプローチでチャレンジングな行動に移せます。

一方、公立校は自校の校長先生が認めたとしても、市区内での調整や、教育委員会との調整など、公教育だからこそ越えなくてはいけないハードルが多く、しかも高くなります。だからこそ、これを動かしてトライできたら、その波及効果は圧倒的な大きくなります。難しい挑戦だからこそ、やってみたい。そんな気持ちになりませんか?

最後に、ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐だった徳増浩司さんの話をします。

徳増さんは、ラグビーの国際統括団体であるワールドラグビーの理事、アジアラグビー の会長などを歴任。一昨年は「最も顕著な貢献」により、アジアラグビー・ アウォードを受賞。W杯の自国開催に挑戦し続け、招致三度目にして日本に開催権をもたらしてくれました。そんな偉大な功績を残された方が、今年度から都立青山高校ラグビー部の外部指導員になったのです。

そのことを知ったぼくは、すぐに徳増さんに電話をして、練習に見学にいかせてほしいと願いしました。徳増さんは、快諾してくれました。
練習に参加させていただくと、多くの発見がありました。

徳増さんはポジティブなことしか言いません。大小を問わず生徒のいいプレーを見つけ、必ず声をかけます。また、全員が同じメニューをしているのに、まるで違うメニューを渡しているかのように、各々に応じた声掛けをしていました。考えさせる要素を渡して、生徒たちに数十秒考える時間を与えます。そのサイクルの中で、彼らはその課題を見事に改善していました。
練習は1時間半と聞いていましたが、見事に時間内に終わりました。練習後には「こんなメニューもあるよ」と生徒一人ひとりに話しかけます。まさに個別最適化が実践されていました。

あんなにすごいことをやってのけた人が、土のグラウンドで高校生と一緒に走り、汗をかいて、部活指導員をしている
その姿を見て、ぼくももう一度、教育という現場に草の根を張るところから出発してみよう。そう思えたのでした。

アジアのラグビー界でも名を馳せており、森田さんが尊敬する徳増浩司さん(写真右)が、私立の強豪校でもなく、都立高校のラグビー部の指導に尽力している。それは、森田さんの想いと通じるものがある 写真提供/森田太郎

(構成/島沢優子)