教師が汗を流した分だけ「ライブ感」は増す
二つめは、学校の外にいる人たちとのつながり方です。
探究学舎で、それぞれの企業や個人がどのように自分たちの価値を高めながら、共にビジネスを展開しているかを学びました。これは、学校から外に出たからこそ、気づけたことです。
民間企業の人たちが、何を軸にしているか。そこに貫かれるのは「互いにウィンウィンになる」ことです。
よく学校では校外学習など外部の企業や人との関わりを通して学ぶ授業があります。総合的な学習の時間や、社会科見学、移動教室など、学校外の人たちに協力がなければ成り立たない授業や行事がたくさんあります。その際に、学校サイドの条件だけを当てはめようとすると、相手方にとってフェアにならないことも出てきます。
相手にとってプラスになることを学校としても考えるからこそ、ウィンウィンになり、互いによりよいものを生み出せます。そのような感覚が、地域に開かれる学校に必要です。せっかく学校に戻るのですから、ぼくは可能な限りコラボレーションの実践を積み上げたいと思います。
そして三つめ。授業を組み立てる際、「現場感」を大事にすることです。
2019年春に探究学舎の講師になって、ぼくが初めて制作に携わった授業は『音楽編』でした。第1章は「これは音楽か、音楽ではないか」が子どもへの問いでした。そこで、さまざまな「音」を録音しにいろんなところに出かけました。
東京都にある深大寺の護摩祈願の音。忠臣蔵でおなじみの泉岳寺にある水琴窟の音、海辺に漂う潮騒、ウグイスやトンビの鳴き声、そして、電車の発車音まで。
このようなリアルな現場をどれだけ踏むか。そこが重要になることを探究学舎で学びました。ネットの知識や本から抽出するだけでは、子どもたちに伝わりません。教師が歩き、汗を流した分だけ、子どもたちに届くライブ感は増すのです。
ただ、多くの現場に足を運んで録ってきた音も使われるのは2割あるかないか。一見すると無駄足に見えます。ところが、その時の歩みがめぐりめぐって生きたりします。
前出の音を取りに出かけたとき、神奈川の金沢八景までたどり着きました。そこで横浜・八景島シーパラダイスと金沢八景の漁師町の景観に出会いました。その時の、海と海の生きものたちとの出会いが、探究学舎で初めて制作リーダーとして作り上げた「海洋生物編」のアイデアにつながりました。
さらにはこの時の体験は、2020年夏休みに開催した「探究学舎×八景島シーパラダイス」のコラボレーションに結実しました。水族館でホンモノの海洋生物たちとともに、授業をするという夢のようなイベントで、多くの子どもたちの笑顔と出会えたのは一生の宝ものです。