公立校で届けたいこと

届けたいものは三つあります。
ひとつは、子どもたちに探究してもらうことです。
例えば、国語の教科書にある『ごんぎつね』(新美南吉作の児童文学)。音読で物語の内容を理解している子どもたちと一緒に読みながら、登場人物の心情を考えるという授業スタイルがあります。でも、子どもたちはなかなか前のめりにならないのが現状です。

世代を超えて読み継がれる新美南吉の作品

大切なポイントとなるのが、良質な問いです。子どもたちが考えたくなる、知りたくなる問いです。探究学舎ではこれを「ドライビング・クエスチョン」と呼び授業づくりの柱にしています。
『ごんぎつね』であれば、兵十がごんを撃ってしまう最後のシーンこそポイントと言えるでしょう。ぼくなら「兵十はなぜ、ごんを撃っちゃったのかな?」と問いかけます。子どもからは様々な意見が出てくるでしょう。ある子は「お母さんにあげようとした鰻を取られた恨みがあった」と言うだろうし、「間違えて撃った」と言う子もいるでしょう。それぞれの考えをみんなで聞きます。

そこでは「君は正解、君は間違い」とジャッジしません。全ての解答、解釈を承認します。その上で、自らの解答や解釈を裏付けるための学びへと発展させます。
ある児童は兵十が撃った理由を、クラスのみんなにアンケートを行い、数値分析をもとにグラフにまとめるでしょう。また、インターネットを用いて「きつね」の生態を調べながら、出来事の真相を暴こうとするでしょう。さらには、歴史的なアプローチもできます。きつねと日本人との関わりといった観点から物語の背景を調べ、兵十が撃ってしまう理由に迫る児童もいるでしょう。

正解を求めるのではなく、前のめりになって学び、探究し、自らの課題に取り組む授業を、子どもたちが主体的につくり上げていく。アプローチも、導き出す結論も、表現方法も十人十色で多彩。まさしく個別最適化です。
しかも、個の学びをみんなで共有すれば、自分とは異なるアプローチからの学びを仲間から得ることができます。個の学びを仲間に伝える、仲間から得るといった共有を繰り返すサイクルは、大人になると非常に役に立ちます。

加えて、子どもたちが互いに競争しあう要素を入れることで、子どもたちはより熱中します。探究学舎の授業「元素編」では、元素カルタを使って元素の名前と特徴を覚えます。従来の「テストで100点をとるため」という動機づけではなく、カルタの勝負に勝ちたくて子どもたちは自ら学び始めます。
つまり、ひとつの戦略なのです。

探究学舎「元素編」の授業。「元素カルタ」を用いてカルタ遊びも行うが、最終的には小学生が自分たちで考え、元素カルタを並び替えて正しい元素表を作るまでに至る