生きた心地がしない…想像以上に深刻な「地方のコロナ差別」の実態

「犯罪者家族!」「早く仕事辞めさせろ!」
阿部 恭子 プロフィール

筆者は、NPO法人WorldOpenHeart(以下WOH)において、軽微な犯罪から重大事件まで、全国のさまざまな状況にある加害者家族の支援を行ってきた。

近年、我々が特に力を入れてきたのは地方の加害者家族支援である。田舎に行けば行くほど事件後の加害者家族は孤立し、追い詰められた加害者家族が自殺に至るケースが後を絶たない。

鴻上尚史・佐藤直樹『同調圧力―日本社会はなぜ息苦しいのか』(講談社現代新書、2020)は、日本の「世間」が生み出す同調圧力による他者への攻撃の例として、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大防止を名目とした「自粛警察」や県外ナンバー車への攻撃等を挙げており、佐藤氏は、「加害者家族バッシング」も同様の構造から生ずる問題であることを指摘している。

WOHでは、こうした状況に鑑み9月から「新型コロナ差別ホットライン」を設置し、犯罪者扱いされている感染者やその家族への相談を受けている。加害者家族に対する排除が強い地域は、コロナ感染者やその家族への差別も強い傾向にある。

当然、東京に差別がないわけではない。東京を始めとする大都市は、多様な人々が集中するだけに、そこから生ずる問題も多い。それだけに問題に対応できる専門家や支援組織も生まれやすく、差別を受けても味方を見つけることが可能である。

一方で、そもそも人口が少なく住民の同質性が高い地域では同調圧力を破るような人や組織は生まれにくい。問題は、差別があること以上に支援がないことであり、世間の暴走を許してしまうのである。

佐藤氏は、「みんな同じ時間を生きている」と考える「人間平等主義」が「世間」を構成するルールのひとつだとし、この感覚から妬みや嫉みが生まれているという。やはり、住民の同質性が高い地域こそ、生活の差が顕在化しやすくいじめや差別を後押しする。

 

若者の感染が増えるようになったことで、子どもが東京の大学に通う家族に対して、帰省を許すなといった同調圧力が強まった地域がある。

感染リスクを怖れるが故ということは言うまでもないが、現在、子どもを東京の大学に進学させられる経済力のある家庭はそれほど多くないことから妬みの対象にもなっている。

コロナ禍に起きた「東京差別」には、田舎暮らしの劣等感も反映されているであろう。