山口さんが傷ついたのは、職場の人々より身内からの差別だった。
「子どもにうつったらどうするんだ!早く仕事辞めさせろ!」
未だに女性が外で働くことを快く思わない地域で育った山口さんは、親戚中から妻に仕事を辞めさせるようにと責められた。
仕事はリモートワークに移行したことにより、職場の人々と直に顔を合わせることがなくなり、精神的にだいぶ楽になった。
最近、同僚たちが山口さんに対してこれまで取ってきた失礼な態度を詫びるようになったという。
感染者がまだ数人しか確認されていない時期は、特別な人だけが感染すると思われていたようだが、この地域でも感染者が急増し、あらゆるところで感染が報告されるようになったことで職場の人々の意識が変わってきたのだという。
それでも対応が変わらないのは田舎に暮らす親族だった。親族から感染者を出したら村八分にされると、山口さん一家とはほぼ絶縁状態だという。
各地で感染者報道が出ると、インターネット上では感染者を特定しようとする書き込みが始まり、家族構成などの個人情報が暴露され、誹謗中傷や嫌がらせによって地域での生活が困難になる。
そして、感染者やその家族、会社が、違法な行為をしたわけではないにもかかわらず、世間に迷惑をかけた事を謝罪しなければならない。この状況はまさに、「加害者家族」そのものである。