ルース・ベーダー・ギンズバーグ氏〔PHOTO〕gettyimages

最悪のシナリオもありえるか…アメリカ「最高裁の保守化」の厳しい現実

「ギンズバーグの死」とその後

ギンズバーグ判事の死

2020年9月18日、アメリカ最高裁判事のルース・ベーダー・ギンズバーグ(RBG)が亡くなった。死因は膵臓ガン。87歳だった。

彼女は、自分の死がアメリカ社会にもたらす混乱の大きさをよく理解していた。だから、「自分の後任の最高裁判事の任命は、11月の選挙で新たな大統領が決まってからにして欲しい」という願い(wish)を孫娘に託していた。

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だが、RBGにもわかっていた、その願いがかなうことがないことを。それがそもそも彼女が死の直前に憂慮した「自分の死がもたらすアメリカの混乱」だったのだから。

彼女の訃報が伝えられてからおおよそ1時間後には、共和党の連邦上院議員のまとめ役である“Majority Leader”――日本では「院内総務」と訳される――のミッチ・マコネルが、空席となった最高裁判事を11月の選挙日前までに承認するつもりであることを公言した。

たった1時間後に、しかも当の大統領であるトランプがまだ誰を指名するかも伝えていない段階で、マコネルは、RBGの喪に服すこともなく、とにかく誰であれ、トランプが指名した人物を最高裁判事にする、と宣言したのだ。それがどれだけの戸惑いや反感、あるいは怒りをもたらしかは容易に想像がつくことだろう。RBGの懸念はあっという間に現実になったのだ。

 

ほどなくトランプは、誰を候補者にするか早々に選び公表すると発表した。実はトランプは、RBGの死去が報道されたときは、11月の大統領選に向けたキャンペーンラリーの真っ最中であり、集まった群衆の歓声の中に「ギンズバーグは死んだよ!」という声が時折挙げられるくらいの、その程度の関心しか示していなかった。その後、トランプは、約束取り、RBGの死去から1週間後の9月26日、シカゴにある第7巡回区控訴裁判所に務める女性のエイミー・コニー・バレット判事を後任に指名した。あとは、マコネルの思惑通り、速やかに上院で承認されるかどうかに移った。

それにしても、自分の死が世の中に混沌を招くと確信しながら死を迎えようとする者の苦悩とはいかばかりのものなのか。マコネルやトランプの反応を容易に予期できたRBGの心中を察しないではいられない。