いよいよクライマックスを迎える『半沢直樹』。最終回は視聴率30%を超えるのでは!? という噂も流れ、勢いはとどまることを知らない。

そんなドラマの快進撃を象徴するキーワードとして、SNSを賑わせているのが、「まるで歌舞伎」、「歌舞伎化が進んだ」など、歌舞伎との関わりを示す言葉だ。中には、「まさにこれはスーツ歌舞伎」というものまである。どうしてそれほどまで歌舞伎が引き合いに出されるのか、最終回を前に改めてその理由を、歌舞伎ソムリエとしても活躍するおくだ健太郎さんとともに、考察してみたいと思う。

歌舞伎役者の熱量が高い芝居に、さらに倍返しの熱量で演じ返す堺雅人にも圧倒される。イラスト/鎌田貴子

歌舞伎役者たちが、いい意味でやりたい放題の効果

これは誰もが感じることであると思うが、まずひとつには、複数の歌舞伎役者が出演し、彼らが毎回アクの強い演技でドラマを彩っている、ということが挙げられる。

7年前のシーズン1で不正の黒幕・大和田常務を演じた香川照之こと市川中車と、金融庁の黒崎役で異彩を放った片岡愛之助。このふたりに加え、今回のシーズン2ではIT企業「スパイラル」の社長に尾上松也、そして、銀行の証券営業部部長、伊佐山として市川猿之助が出演している。さらに第8話からは、スーパー歌舞伎『ワンピース』などに出演経験のある浅野和之も登場してきて、終盤で歌舞伎役者の密度はさらに高まっている。

そもそも、香川照之はシーズン1で、あの、スーツから湯気が出そうな力のこもった「土下座」と「顔芸」が話題を呼んだ、いわば“歌舞伎的なもの”に注目を集めた立役者ともいえる存在だ。その大和田常務が前回の一件で降格となり、今回は平の取締役として再登場となった。これは原作とは違う、ドラマ版に新たに設定された内容だ。

そして歌舞伎役者をさらに増員……放送開始前にそんなキャストの布陣を見て、シーズン2は歌舞伎の度合いがさらに増すのでは、と期待した人も多かったのではないだろうか。

今回も香川照之演じる大和田のターボ全開でくどさ満載の演技が話題も人気も集めた。イラスト/鎌田貴子

案の定、伊佐山部長を演じる猿之助は、毎回、まさに顔を赤く塗った歌舞伎の敵役を表現する【赤っ面(あかっつら)】(注1)そのもののように、半沢への敵意をむき出しにした演技で異様なまでの存在感を見せつけてくれた。彼ら歌舞伎組と堺雅人演じる半沢直樹の丁々発止のやり取りが、ドラマの魅力の一つとなっていることは間違いない。

注1歌舞伎では、敵役の顔を赤く塗って表現し、これを『赤っ面(あかっつら)』と呼ぶ。ただし、悪人といっても、大物の悪党ではなく、その下の乱暴者な家来など。まさに、伊佐山部長のポジション。