最初は「些細な異常」から

思い返してみて、最初に感じた異常は2019年1月「太ももが少し上がりにくくなった気がする」でした。誰もが運動不足になったときに経験する「階段を上るときに疲れる」というあの状態です。でもちょっと違ったのは、「息は切れていないのに足だけが上がりにくい」ということでした。日頃から演出や講師として若者と動いていたので、そこそこの体力自慢であったのですが、いよいよ年齢で衰えたのかなと悔しい気持ちでした。

このままではいけないと率先して動き回って運動不足を補おうとしました。またエレベーターを使わずに階段でも移動しました。でもあまり効果はありませんでした。その瞬間瞬間は動けるのですが、やはり長い距離を歩いたりした後に階段を上ろうとすると「持ち上げにくい感覚」があるのです。でも痛みはありませんでしたし、筋肉痛にもそんなにはなりませんでした。

2019年2月の舞台の時、妖怪の役でセンターから登場するシーンで、最後の高台の階段を上るときに、「腿が上がりにくい」とハッキリと感じました。舞台から客席に飛び降りる時に少し自重する感じにもなっていましたが、この時も足が上がりにくいだけで他は全く問題がなく、「過多なスケジュールで相当疲れているのだな」と思いました。転んでも「新しい靴が合わないのが原因」と勝手に思い込みました。このときのことは連載の第1回に詳しく書いていますが、3月、4月とおかしくなっていき、徐々に周囲からも心配されるようになりました。

2019年2月アフリカ座元の公演での写真。腿が上がりにくいとは感じていたが…写真提供/津久井教生

足が上がりにくい自覚と共に、運動やストレッチを意識的に始めたのは2019年4月からです。学校の授業で「表現」という講義を受け持っているので、「呼吸」や「共鳴」などを教えるためには、実際に動いて発声して授業で見せていく必要があり、体が動かないと話にならないからです。