52歳、不安はあるけれど2人目を産みたい

日本ではシングルマザーで求職中となったら、不安で仕方がないはずだ。カーンさんは福祉の下で安心して生活ができているからこそ、もう一人産みたいと考えられる 撮影/小林香織

デンマークでは、フェミニズムや性の話題に対してオープンに話せる雰囲気があり、不妊治療やドナー提供についても、隠すことなく堂々と話すことができるとカーンさんはいう。なぜ、日本ではタブーとされがちな性の話題をオープンに話せるのか尋ねてみた。

「デンマークでは、1800年代後半からフェミニズムの運動が始まり、女性の投票権と相続権を獲得、1960年代には女性の平等な労働と賃金を求めるムーブメントがあり、男女が平等に働き始めました。国家とフェミニストたちが力を合わせて平等な社会を創り出したんです。

デンマークは、1989年に世界で初めて同性のパートナーシップが認められた国であり、それに伴い体外受精も選択肢として広く受け入れられるようになりました。

自然に妊娠できる人もいれば、治療をしないと妊娠できない人もいる。いろいろな事情があるなかで誰もが平等になるように社会福祉制度が作られてきた。そんな文化の流れが昔からあるから、不妊治療の話題がタブーとは思えないんです」(カーンさん)

もちろん、国民の中には独身女性が子供を持つことを嫌い、「自分勝手な選択だ」と罵る人もいる。だが、それはマイノリティな存在であり、国民の多くはカーンさんのような選択を受け入れているようだ。

現在、52歳のカーンさんは真剣に2人目を出産することを考えているという。彼女の今の率直な思いとはーー。

「ドナー提供による若く健康な卵子を使用した場合、妊娠成功率は60〜70%と高く、年齢的にリスクはありますが、十分に薬を施せば不可能ではありません。もしかしたら、これから生まれる子供が20歳を迎えるときに私は亡くなっていても不思議ではないけれど、やっぱり2人目がすごく欲しいんです。娘に兄弟を作ってあげたいし、彼女を将来1人にしたくないから」(カーンさん)

いま、カーンさんは重大な決断を迫られている。彼女が心から納得する決断を下せるよう願うばかりだ。