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閉ざされた村で5人の女性を殺害…内臓をえぐり取った男の「本当の狙い」

長野で起きた、本当の事件

1968年に出版され、累計250万部以上を売り上げた『あゝ野麦峠―ある製糸工女哀史』(著:山本茂実)という作品がある。同作は、明治から大正時代にかけて、岐阜県の若い女性たちが野麦峠を超えて長野県の製糸工場へ働きに出る模様を忠実に描いたノンフィクションで、1979年には大竹しのぶ主演で映画化、後にはドラマ化もされている。

さて書籍版『あゝ野麦峠』の中盤に「天竜川の哀歌」というサブタイトルで、ある連続殺人鬼の名前が出てくる。それが本稿で紹介する「肝取り勝太郎」である。『あゝ野麦峠』ではあくまでサブエピソードとして、4ページほどの分量で「肝取り勝太郎」の話を取り上げているのみだが、もう少し深く掘り下げてみたい。

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秋祭りの最中に消えた16歳の少女

今から100年以上前の1905(明治38)年。本事件の舞台は長野県上伊那郡辰野町の集落である。現在では、東京駅から特急で3時間ほど、「ほたるの里」「日本のど真ん中」のキャッチコピーで観光地としても注目されている辰野町だが、この当時は鉄道も通っていない非常に長閑な場所であった。

その年の9月1日、辰野(当時の名称では朝日村)の神社で盛大な秋祭りが行われた。当時の村祭りといえば、地元の人にとっては大いに羽目を外せる年に1回か2回の一大イベントである。

そのお祭りの最中、村の酒屋で働いている16歳の女性が行方不明になってしまった。

お祭りの最中に消えたという事もあり、周囲では「男と駆け落ちしたのでは?」と囁かれたが、待てど暮らせど帰ってこない。そして行方をくらませてから9日後の9月10日、女性は朝日村と隣村の間にある田んぼの中で死体となって発見された。