『ねぎびとカンパニー』HPより

なぜネギ1本が1万円で売れるのか?

『ねぎびとカンパニー』から学ぶ経営術
「1本1万円のネギが売れている」そう聞くと驚く人も多いのでは?

『ねぎびとカンパニー』社長・清水寅氏は7社を経営する社長を脱サラし、2011年から農業を始めた中途参入組。
しかし今では『ねぎびとカンパニー』のネギは1本1万円の価値が付くほどに…。

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1本1万円のネギが売れている

1本1万円のネギが売れている――。

そう聞いて、驚かれる読者は多いのではないでしょうか?「ねぎびとカンパニー」が販売している贈答用ネギ「モナリザ」がそれです。

うちではすでに2015年から、8本1万円の「真の葱」を発売しており、限定30セットが毎年売り切れるほど好評をいただいていました。だから2019年にモナリザを発表したときも、ちゃんと売り切る自信はあった。実際、たちまち5件の予約が入り、慌てて予約受付を止めたぐらいなのです。

うちで1年間に出荷するネギは200万本。そのなかに、ビックリするほど太く、見た目のバランスも美しく、味もこのうえなくいい芸術品が生まれてくる。1年間にだいたい10本ぐらいでしょうか。それが5本なのか20本なのかは、神のみぞ知る世界。だから、万が一に備え、いったん5件で予約を止めたわけです。

『ねぎびとカンパニー』HP
 

それまで、こうした芸術品を売る場所はありませんでした。農協に出荷する場合、味は問われず、見た目だけで評価されます。長さや太さで規格を決めるため、モナリザのような極端に太いネギは規格外としてハネられてしまう。どんなにおいしかろうが、どんなに美しかろうが、それは「商品」たりえなかったのです。

フルーツの世界は違います。ねぎびとカンパニーがある山形県の名産といえばサクランボですが、優、秀、特秀という等級があって、特別に大きくて色みの濃い特秀になれば、秀の倍ぐらいの値段がつく。秀、優しかない野菜の世界とは大違いです。

「なんで野菜の世界には、特秀がないんだ!」

そのいらだちが出発点だったのです。500グラムの贈答用サクランボが1万2000円しても、みんな平気でお金を出します。なぜ同じことがネギでは不可能なんだ? それ以前の問題として、どうして贈答用のネギが存在しないんだ?

そう考えて、ネット販売の形でモナリザを世に問うたわけです。

結論から言うと、初年度の2019年は失敗しました。秋の台風のせいで、ほんの少しだけ曲がってしまったのです。畑に植わった状態では、地下の様子はわかりようもなく、今年もモナリザが生まれてくると信じて疑わなかった。

2日間ぐらい重しをのせておけば、まっすぐにはなるのですが、信用にかかわる問題だと考え、断念しました(ご注文いただいたお客様にはお詫びの連絡を入れて返金し、別の贈答用ネギとホウレンソウを送りました)。

将来的なブランド戦略としても、断念したのは正解だったと考えています。「何年も待って、ようやく買えた!」くらいの存在になるほうが、ブランド価値は高まる。

よりによって初年度に失敗したとはいえ、この数年、モナリザは必ず生まれてきている。2020年冬には初出荷が実現すると確信しています。