なぜ日本の少子化対策は「大失敗」だったのか?

安倍政権の総括、そこから見えたこと
赤川 学 プロフィール

端的にいって、名目GDPが一定水準で持続的に成長しさえすれば、現行の年金制度は維持できる(ただし「日本人が減る」という問題だけは解消されないが)。

実は、アベノミクスのほんとうの意義は、積極的な金融緩和による円安、株高、デフレ脱却によって、人口減少下にあっても、経済が持続的に成長できることを「実証」してみせることにあった。 

現在では、ほぼ誤解は解けたと思われるが、このような政策は「新自由主義」でも「極右」でもなく、世界標準では「中道左派」に属する政策である。

実際、名目GDPは2012年の494.4兆円から、2019年の552.5兆円へと58.1兆円、すなわち約12%増加している。有効求人倍率も、2012年には1を割り込んでいたが、2019年には1.6。つまり、働こうと思えば、誰もが働ける時代がやってきた。

個人的な感想で恐縮だが、大学教員として、大学生や大学院生を見守る立場を続けていると、リーマンショックや東北大震災直後と比べて、第2次安倍内閣のあいだは、笑顔で卒業する学生が増えたことに気づかざるをえない。

もちろん経済成長についていえば、ここ7年間の名目GDPの平均成長率は1.6%(図2)。けっして褒められた数字ではなく、先進国では最低水準である。

2013年からの3年間は着実に2%超えの成長をしていたことを鑑みると、やはり2014年・2019年の消費増税は、ボディブローのように経済成長を阻害してしまったように思われる。

図2(データ:内閣府、有効求人倍率は労働政策研究・研修機構)
 

消費増税で景気が冷え込んだまま、さらに2020年5月にはコロナ禍に伴う非常事態宣言が行われ、2020年度の名目GDPはかなり減少することが見込まれている。

仮に年率換算で10%以上の減少となると、アベノミクス以降に増えたGDPの増分はほとんど無に帰してしまいかねない。

このような非常時には、増税なしに積極的な財政出動を行ない、国民の安全と生命を維持することこそ、政府の役割というべきだろう。子育て支援についても、それが出生率を増やすかいなかとは無関係に、支出を大幅に増やすべきであろう。