なぜ日本の少子化対策は「大失敗」だったのか?

安倍政権の総括、そこから見えたこと
赤川 学 プロフィール

女性労働力率やM字型カーブが解消しても…

前ページで言及した図1は、2012年(民主党政権最後の年)から2019年までの合計特殊出生率と、女性労働力率の推移を示したものである。

図1(データ:OECD Data、厚生労働省人口動態統計 年齢別女性労働力率は労働政策研究・研修機構)

赤い棒線で明らかなように、出生率はここ7年間でまったく増えていない。四捨五入すれば1.4でピタリと止まっている。

他方、男女共同参画やワークライフバランスの文脈でしばしば喧伝された「女性労働力率が高くなれば、出生率も高くなる」という関係はまったくみられない。

左目盛りにあるように、15-64歳の女性労働力率は60.7%から70.9%と10%以上単調増加し、欧米「先進国」並みの水準に達しているが、出生率とは相関していない(*2)

 

また日本の女性学者やジェンダー研究者がしばしば自明視してきた「M字型カーブ(結婚・出産・子育て期に女性が離職する傾向)が少子化の原因」という説も、どうやら間違っていたようだ。

女性労働力率を25〜29歳、30〜34歳、35〜39歳の年齢別にわけると(M字の「谷」があるとされた年齢層)、30代になると女性労働力率は数%下がって、多少の「谷」はあるものの、ここ7年間でいずれの年齢層でも、高くなっている。

つまりM字カーブの「谷」の部分はほぼ解消されたわけだが、出生率は上がらなかった。

特定の人々にとっては残念な結果かもしれないが、女性労働力率が高まれば、M字カーブが解消されれば、出生率が高くなるという説は、ほぼ反証されたのではないか。

(*2)少子化対策のお手本とされる「先進国」フランスの、2019年における15〜64歳女性の労働力率は68.2%。日本は72.6%。その他の年齢別でも、日本の女性労働力率はフランスを凌駕している(ちなみにフランスの2019年の出生率は1.85)。なのに、なぜ、日本の出生率は上がらないのだろうか。