なぜ日本の少子化対策は「大失敗」だったのか?

安倍政権の総括、そこから見えたこと
赤川 学 プロフィール

今にして思えば、合計特殊出生率が1.57というのは、かなり高い数字にさえ思える。第二次安倍内閣が成立した2012年の合計特殊出生率は1.41(第2次安倍内閣は同年12月の成立なので、この数字はほとんど民主党政権時代の数字とみてよい)。

その後、出生率は0.1未満の範囲で微妙に上下動を繰り返しながら、2019年のそれは1.36。ほとんど誤差の範囲でしか動いていない(図1)。もちろん30年前の水準には、1度として到達していない。

図1(データ:OECD Data、厚生労働省人口動態統計 年齢別女性労働力率は労働政策研究・研修機構)

無論これは、歴代の政権が「無策」だったからではなく、与野党問わず、ここ30年間、少子化を問題視し、なんとか出生率を高めようと努力してきた。

エンゼルプラン(保育サービスの充実)、次世代育成、男女共同参画、子ども手当、ワークライフバランス、働き方改革、地方創生、女性活躍など、目まぐるしくスローガンを変えながら、「官民一体」の取り組みがなされてきた、はずである。

 

にもかかわらず、少子化対策は奏功しない。だとしたら、何かが間違っていたのではないか。そのような疑念が生じて当然だろう。実際、家族社会学者の山田昌弘氏は、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?』(光文社新書、2020)という著作を、今年5月に刊行している。

ほそぼそとした歩みながら、筆者も20年ほどこの問題に関わってきた。「女性が働きやすい国や社会ほど出生率が高い」だの、「仕事と子育ての両立困難を解消すれば少子化は防げる」だのといった言説の欺瞞を、国民に真の情報を発信する実証主義の観点から疑義を呈してきた。

それでも、筆者のように、「少子化問題は、現行のやり方では解決しないし、解決する必要もない」、「子どもが減って何が悪いか!」、「少子化対策を止めて、ステルス支援に徹しよう」という立場は、政治的、政策的には黙殺されるほかない。

それは構わないのだが、ここ20年、「〇〇を行えば、少子化に歯止めがかかる」というタイプの言辞を弄してきた専門家、学者、評論家、政治家の方々には、真摯に反省していただく必要はあるだろう。

そのための素材を提示したい。