アジア系アメリカ人は「何人」なのか

幼い頃、家族とともに中国からNYに移り住んだ移民2世の女性・ビリー(オークワフィナ)は、ガンにより余命3ヶ月となった祖母に会いに、家族と共に中国に帰郷する。祖母自身は、ガンであることも余命も知らせていない。皆が集まる口実をつくるため、ビリーのいとこのウソの結婚式を開く一族たち。そこで久しぶりに一族郎党に囲まれたビリーは、移民家族のさまざまな「価値観のズレ」に直面するなかで、ビリ―は大切なことに気づいていく――というのが本作のストーリー。なんと、監督の実体験を元にしているというから驚きである。

祖母の前で必死に演技をするビリーのいとこ/『フェアウェル』より

監督自身も、幼い頃に中国からアメリカに移住している。そのとき親から受けた教育が、周りの中国系の家庭と大きく異なっていたという。

「私の母はライターで、父は外交官。2人とも先進的な人で、ほかの中国系移民の家族とは違っていました。例えば、多くの中国系の子供たちは親から『中国のルーツを忘れるな』と言われ、アメリカにいるのに中国人であることを強いられる。

でも私の両親は正反対で、『(外見や言葉のハンデで)誰に何と言われても、あなたはアメリカ人で、アメリカの一員だということを忘れないで』と教えられました。また、アジア系は男尊女卑的な考えが強い傾向がありますが、『女だから〜しろ』と言われたことがありませんでした。そのことに、とても感謝しています。おかげで、『白人ができることはアメリカ人の私にもできるし、男性ができることは女の私にだってできるはず』と自信がもてたんです」(ワン監督、以下同)

監督が自らを「アメリカ人」であると言い切ったことが興味深かった。人種や民族、言語に惑わず、国籍のみに帰属意識を持てるのはなぜなのか。