ニューヨークのクリスティーズで10月、ある巨大なものがオークションにかけられる。高さ4メートル、全長約12メートル。ティラノサウルスの骨格標本 「スタン」だ※1。
An approximately 67 million-year-old Tyrannosaurus Rex skeleton known as 'STAN' is on display ahead of its public auction at Christie's in New York City https://t.co/cKQxLTEaWs via @reuterspictures pic.twitter.com/Ee8V9LkZNY
— Reuters (@Reuters) September 16, 2020
「スタン」の名は、1987年にサウスダコタ州でこの骨格化石を発見したアマチュア考古学者の名前にちなむ。多くの骨がそろった状態の良い標本として有名で、日本でも東京の国立科学博物館や、北九州市立いのちのたび博物館にレプリカが展示されている。
もちろん、オークションにかけられるのはレプリカではなく本物だ。オークションは10月6日の予定で、取引予想額は600万〜800万ドル(約6億〜8億円)とされている。
クリスティーズの発表によれば、生きていたときのスタンの体重は「7トンから8トン」。アフリカゾウの2倍だという。骨格しか残っていないスタンの体重がどうやってわかったのだろうか。
どんなものでも、体積に密度をかければ重さが計算できる。2009年の研究では 、スタンの骨格から体全体の三次元復元モデルを作って、そこから体積を求めた※2。恐竜の密度は、水と同じ1立方メートル当たり1トンという値がよく使われる。計算すると、7.6トンという推定値が得られた。
恐竜の体重を推定するには、もう一つ別の方法もある。上腕骨や大腿骨など、体重を支えている脚の骨の太さを使う方法だ。現存している動物の骨格を参考に作った、脚の骨の円周と体重の関係を表す公式に、化石の骨の測定値を当てはめると、体重が計算できる。
2005年にアルゼンチンで、白亜紀後期の草食恐竜の化石が発見された。発掘したドレクセル大学の研究チームは、脚の骨の公式を使う方法で体重を推定し、2014年に発表した※3。
上腕骨の円周は78.5センチ、大腿骨の円周は91センチあった※4。 そこから計算された体重は60トン。アフリカゾウ12頭分、ティラノサウルス7頭分だという。
この新種の巨大恐竜は、「恐れ知らず」を意味する「ドレッドノータス」と命名され、最大級の超巨大恐竜としてニュースになった※5。
ところが翌2015年、リバプール大学の研究チームが、体積から推定する方法を使って計算すると、30〜40トンになった。これはドレクセル大学の発表した体重の3分の2弱の値だ。
体重は、恐竜の生態や体のしくみを考える重要な手がかりになる。新種の恐竜ドレッドノータスがどんな恐竜だったのかを知るにも、体重の情報はかかせない。