――先ほどCDに比べてストリーミングは利益率が下がるということを仰っていました。日本では、サブスクで聴かれても1回あたりの収益は大きくないという悲観的な見方もまだあります。このあたりについてはどうでしょうか。
去年の秋にカンファレンスでヨーロッパやアメリカのインディーズレーベルの人たちに会ったときに「フィジカルがなくなってストリーミングに変化していく時に恐怖を感じませんでした?」って質問をしたら、彼らは一様に「全然平気だった」と答えたんです。
それはなぜかと言うと、南米市場が広がったから。南米の人たちにも聴いてもらえるようになって売り上げは落ちなかった。つまり欧米の人にとってはグローバル化が大きなメリットになったわけです。
日本の場合はドメスティックな考え方が強く根付いているんですけれど、ヨーロッパやアメリカにとっての南米のように日本のアーティストがアジア各国に音楽を広げられるチャンスがあるんだとしたら、そこには大きなマーケットがあるわけで、それをメリットとして考えていく必要があるんじゃないかと思います。
現実的に、さっき言ったようにThe fin.は中国で成功しているし、最近だとWez AtlasやVivaOlaというような若い世代のアーティストが、うちが始めた「FRIENDSHIP.」というサービスを使って出てきている。
彼らは最初からグローバルでやることが前提で自分の音楽表現を始めています。そういうアーティストをちゃんとピックアップして広げることを考えていきたいと思っています。
――FRIENDSHIP.というサービスはどのようなものなんでしょうか。
FRIENDSHIP.というのは、いわゆるアグリゲーションやデジタルディストリビューションと言われるサービスです。CDにおける流通業に近くて、アーティストとApple MusicやSpotifyのようなプラットフォームの間に入って音楽の流通をサポートする仕組みです。
――アーティストとレーベルやプロダクションの関係についても聞かせてください。これまでは原盤権をレコード会社や所属事務所が持つ例が主流でしたが、FRIENDSHIP.では原盤権をアーティストが持ち、事務所に所属はしないという仕組みになるんでしょうか。
そうですね。いろんなパターンがあるんですけど、基本的にFRIENDSHIP.はディストリビューションをするところからスタートします。
その関わりは最低限持つんですけど、やっていくうちに、例えば出版の著作権管理をしてほしいなら、うちの著作権管理の部門がそのサービスをしますし、さらにプロモーションをしてほしいなら、ラジオプロモーションや媒体プロモーションのサービスをうちのスタッフがやる。ライブのブッキングや、グッズ制作、ファンクラブにしても、もしアーティストがやってほしいなら、その手伝いをします。
要は、アーティストのニーズに応える形で部分部分のソリューションを提供していくのがFRIENDSHIP.のスタイルです。