コロナで壊滅的被害の音楽業界、次の時代に向けた「変化と希望」

野村達矢氏インタビュー(後編)
柴 那典 プロフィール

日本より中国で人気の意味

――The fin.は神戸出身のバンドですが、ロンドンに拠点を移して活動する中でアジアでの人気がどんどん高まり、昨年には中国ツアーで1万5000人を動員しています。彼らはなぜ海外で人気が高まったんでしょうか。

そもそも僕らがThe fin.と仕事をしようと思った最初の時点で、このバンドがドメスティックなバンドで終わらないという確信を持っていました。だから発想としてはスタートからグローバルでやっている意識でした。

今までの日本のアーティストの海外進出パターンは、日本で売れて、日本で売れたことを地盤に海外に進出するというのが多かった。例えばPerfumeも、ONE OK ROCKも、L'Arc〜en〜Cielもそうです。

The fin.の場合、日本でも海外でも同じように新人から育っていくという道程を歩んでいきました。そういう中で日本よりも先にヨーロッパで音楽が評価される現象が起きたんですね。

 

――イギリスやヨーロッパでの評価が中国やアジア各国に広がっていったということでしょうか。

そうですね。特に今は中国のデジタル音楽市場が急速に拡大しています。2015年に習近平がデジタル改革を推し進めてから大きく変わりましたね。

北京や上海に行ったときに僕も驚きましたけれど、向こうの人は決済に関してもほぼ財布を持ち歩かずスマートフォンで済ませるようになっている。音楽や映像コンテンツも、テンセントをはじめ、大きなITの会社がインフラを作って、いろんなものがそこで完結できるようになっている。

かつて海賊盤が山のようにあった時代とは比べ物にならないくらい、権利意識も高まってきている。30代の人たちが現場の責任者になって、新しいリテラシー、新しい責任感を持って仕事をしているのが今の中国ですね。

――今回のThe fin.のオンラインライブも、そうした中国のプラットフォームを用いて同時配信されたということでしょうか。

そうですね。今回はNetEase Cloud Music、ShowStart、BiliBili、Modern Sky Now という4つのプラットフォームでオンラインライブをやって、合計で約20万人というリスナーの数字になりました。

もちろんビジネス的に100%うまくいくかどうかという意味での課題もたくさんあるんですが、マーケットも成熟してきていますし、海外の音楽に対しての関心が高まっている状況はあると肌で感じています。