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コロナで壊滅的被害の音楽業界、次の時代に向けた「変化と希望」

野村達矢氏インタビュー(後編)

コロナ禍で大打撃を受けたライブエンタテイメント産業は、そしてストリーミングへの移行によって大きな構造変化の過渡にある音楽業界は、この先どこに向かうのか。エンターテインメント業界の次代のキーパーソンたちが、コロナ禍の現在とこれからを発信する連載企画「Breaking the Wall」――。

野村達矢氏(一般社団法人 日本音楽制作者連盟理事長・株式会社ヒップランドミュージックコーポレーション代表取締役社長)へのインタビュー後編。政府への働きかけや、ライブエンタテイメント従事者支援基金「Music Cross Aid」の創設、中国など海外市場への展開、さらにはこの先を見据えた変化の兆しについて、話を聞いた。

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状況は全然良くなっていない

――前編ではオンラインライブの現状についてお伺いしましたが、ここからはコロナ禍を受けた音楽業界の現状について聞かせていただければと思います。2月26日から自粛期間にはライブの延期や中止が相次いでいましたが、そこから約半年が経ち、ライブエンタテインメント産業の現状はどう変化してきていますか?

一言で言うと、全然良くなっていないです。

ライブエンタテインメントは依然として窮地に置かれていますね。7月10日から上限5000人もしくは収容人数の2分の1のいずれか少ないほうという制限のもとにイベントがスタートしましたが、そもそもこの条件では収益をあげることは難しい。9月19日以降に制限が段階的に緩和される協議が進んでいますが、風評的な部分でチケットの買い控えも発生している。

ライブエンタテインメントの窮地は何も改善されていないですね。

 

――野村さんは音楽制作者連盟の理事長として政治への働きかけもしていたそうですが、どういう動きでしたか?

2月26日に僕らがロックダウンさせられた当初から、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、コンサートプロモーターズ協会の3団体でロビー活動を始めました。

決まっていた公演をどんどん中止や延期にせざるを得ないことがあって、現実的にそこで出ていく損失を目の当たりにしたわけです。どれだけの本数が中止になって、いくらの損失が出たかが、リアルな数字としてわかる。その現実を政府にぶつけて、損失を補填してほしいという主張をしました。

けれど、政府の答えとしては、損失の補填や補償はしない。そういった形の経済的な支援はありえないと強く主張されました。どうやら補償の定義自体に国が加害者となり僕らが被害者になるという図式があるらしいんですよね。

僕としては補填するしかないと思うんですが、「損失補填という言葉を使った時点で話は止まりますよ」と何回も言われました。だったらどういう違う方法で経済的な支援ができるのかを考えなきゃいけない。

そこでJ-LODlive補助金(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)という仕組みを使うことになった。これはそもそも、日本のエンタテインメントが海外に進出して海外でライブをするときに、それを支援する制度として経産省が作っていた経済支援システムなんですね。それを日本でやるライブ公演についても認めることになった。ライブ公演を映像配信して海外の人たちが見られるようにすることで助成金を出すという仕組みにしたことで、878億円の予算がつきました。

こうしてエンタテインメントに対する支援策はできたんですけど、あくまでもそれは損失補填や補償ではなく、再開してライブやオンラインライブをやることに対して助成するわけですから、ライブが再開できない限りは支援金ももらえない。かつ、ややこしい制度を作ることによって、そこに経費や中間作業がものすごくかかってしまう。

そういうこともあって損失補填を訴え続けたんだけれど、やはりなかなか補償は受けられないという。なので、民間で支援しあう仕組みを作る必要があると感じて作ったのが「Music Cross Aid(ライブエンタメ従事者支援基金)」という基金です。