日本三大都市の一つで、食が豊かな愛知県名古屋市と、その名古屋からほど近くにある焼きものの町、岐阜県多治見市。菓子研究家の長田佳子さんが自分のお菓子に合う器を探しに出かけてみたら……。信念を持って文化を発信する人々と出会い日々の暮らしを思索する旅となりました。

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お菓子に合う器を探して岐阜・多治見へ。

「愛知がこんなに和菓子の名菓が多い場所だったなんて」と長田さん。/芳光 愛知県名古屋市東区新出来1-9-1 ☎052-931-4432
〈芳光〉のわらび餅に感動。「つまんだ先からこぼれ落ちそうな柔らかさで、素材が最小限の力でつながっているような印象。栞に、“日持ちのしない菓子ほど味の良さにつながるとの確信を得た”と清々しく書いてあり、静かに唸りました(笑)」。

翌朝、再び〈ボンボン〉で朝食をとり、〈芳光〉でわらび餅を購入してから、車で1時間ちょっとの岐阜へ向かう。

〈ギャルリ百草〉のエントランスは気持ちの良い雑木林。思わず深呼吸したくなる。/ギャルリ百草 岐阜県多治見市東栄町2-8-16 ☎0572-21-3368

目指すは岐阜の多治見にある、作家の安藤雅信さん・明子さん夫妻が営む〈ギャルリ百草〉だ。

名古屋で出会った築100年を超えるという古民家を多治見の山間に移築し、オープンして22年。オーナーの安藤雅信さんは現代美術家を経て陶作家になった経歴の持ち主。生活道具も現代美術もジャンルの垣根なく生活に取り入れられるようにすることを信条とし、一大ブームとなった「生活工芸」という概念を提唱してきた第一人者でもある。長田さんも何度か訪れたことがあるそう。

優しい光が差し込む〈ギャルリ百草〉の店内。

「真夏の暑い盛りに来たときは、入り口の土間にブロックの氷を吊るして飾っていらしたんです。眺めるだけで涼しげで、美しい光景でした」

〈ギャルリ百草〉で見つけた安藤雅信さんの定番アイテムである片口。中国茶の「茶海」(小さめの茶杯にお茶を注ぐのに、茶壺からお茶を一度移し替えるための道具)としても人気を博している。

1階では企画展を開催、2階は安藤さん夫妻の作品を中心とした常設展となっていて、「こんなにたくさんの作品を一堂に見られるのは初めて!」と嬉しそう。白磁や粉引き、銀彩といった定番の器が並ぶなか、小さな茶杯や片口も充実していた。

安藤さんの作品は、板状の粘土を直接、石膏型に押しつける「タタラ作り」で作られている。焼くときに器が歪んでしまうこともあり、一般的に陶芸家が価値をおかない技術ではあるけれど、「負とされるところに価値を見出すことはアーティストの役割のひとつ」と安藤さん。色味も完全な白というより、ゆらぎや余白を感じる多様性のある白。「こういうニュアンスのある白い器って、なんでもないように見えて、なかなか見つからない感じですね」と長田さん。

「最近は中国茶のイベントもたくさんされていますよね」と聞くと、中国茶にハマったいきさつから、今後力を入れていきたいことまで、安藤さんが語ってくれた。もともと茶の湯を長く嗜んできた安藤さんは、日本の文化にも造詣が深い。

「日本は世界でいちばん老舗が多いと言われているんですよ。歴史が途絶えていないから、ずっと古い文化が続いてきた。海外の文化も受け入れて、日本独自に発展させるのがうまい。サードウェーブなんていうコーヒーカルチャーだって、日本の喫茶文化の影響を受けてるんですよ」