孫正義の「戦慄すべき投資能力」、ついにソフトバンク非上場化で「イグジット」…なのか?

アーム社「4.2兆円売却」の狙い
加谷 珪一 プロフィール

株式を非上場化すれば、経営の自由度が一気に増すので、ポートフォリオの入れ換えもスムーズに実施できるだろう。孫氏もいつかは人としての寿命を迎える。これ以上の事業の拡大が困難になりつつある今のタイミングで非上場化することは、若い時からベストな引退のタイミングを考え続けてきた孫氏にとって悪い話ではないだろう。

2020年3月時点において、孫氏は同社株を21.25%保有する大株主である。同社の9月時点の時価総額は約14兆円しかなく、保有株式の潜在的な時価総額を大きく下回っている。孫氏の保有分以外をすべて買い付ける場合でも11兆円の資金があればよい。

 

孫氏に加えて、大口の投資家などを出資者に迎え、一連の投資家グループが上場している株式を買い取る形にすれば、数兆円程度の自社株買いを実施するだけで非上場化できる。この程度の金額であれば、保有するアリババ株などを売却することで十分に捻出できるだろう。

投資というのは、お金を出資するタイミングよりも、それを利益に変え、投資を終了させるタイミングの方がずっと難しい。投資の世界では、投資対象をお金に換え、投資の作業を一通り終わらせることをイグジット(出口)と呼ぶ。

もし、孫氏が非上場化に成功すれば、コントロール不能なレベルまで巨大化した投資ファンドを、魔法のようにイグジットさせたことになる。同社の半永久的な成長に期待して資金を投じた個人投資家にとっては、今後の成長機会を奪われたという話になるかもしれないが(一部の人は孫氏が逃げたと批判するだろうが)、投資という冷徹な世界の評価基準では、孫氏は最後の最後まで完璧だったとの見方になるだろう。