孫正義の「戦慄すべき投資能力」、ついにソフトバンク非上場化で「イグジット」…なのか?

アーム社「4.2兆円売却」の狙い
加谷 珪一 プロフィール

スマホの半導体分野で圧倒的な地位を占めているアームはまさにそうした企業のひとつだった。潜在力が極めて高い企業が売りに出ることは滅多にないので、そのタイミングで瞬時に決断しなければチャンスを失う。買収後の展開については買ってから考えるというのがこの世界の常識である。

ソフトバンクグループはメーカーではないので、筆者はどこかのタイミングで売却することになると予想していたが、4.2兆円もの金額で、エヌビディアに売却できるとは思っていなかった。これは孫氏が強く働きかけたものなのか、エヌビディア側が望んだものなのか現時点では不明だが、ソフトバンクグループにとって極めて大きな利益であり、孫氏の投資の才覚には戦慄を覚える。

では、虎の子の投資先であったアームを売却し、多額の利益を得たソフトバンクグループにとって、次の狙いはどこにあるのだろうか。筆者はズバリ、同社の非上場化であると考えている。非上場化について孫氏は一言も言及していないが、市場では非上場化の噂が出ては消えるという状況が続いてきた。あくまで状況証拠的な話でしかないが、今回の売却で環境はさらに整ったと見てよいだろう。

〔PHOTO〕Gettyimages
 

最大の懸念材料は後継者問題

今のソフトバンクグループにおける最大の懸念材料が孫氏の後継者問題であることは論を待たない。今回のアーム売却は典型的なケースだが、これまでの同社の業績はほぼすべて、孫氏の傑出した投資センスによってもたらされてきた。

現時点においてソフトバンクグループの社内はもちろんこと、IT業界全体を見渡しても、後継の立場にスムーズに就任できる人材はゼロに等しい。特に近年は、事業会社から投資会社へのシフトを強めており、投資に関する類い希な能力を持っていなければ、同社の舵取りはできないだろう。

孫氏もこの問題については重々承知しており、2010年には後継者を育成する目的で、ソフトバンクアカデミアという社内学校を設立している。2015年にはグーグル出身のニケシュ・アローラ氏を重要な後継者候補であると紹介したこともあったが、翌年の株主総会でアローラ氏は事実上、解任されてしまった。