サカナクション「2日間で6万人視聴」オンラインライブから見えたこと

野村達矢氏インタビュー(前編)
柴 那典 プロフィール

――ライブスタッフの仕事や収入源としては、どうでしょうか。オンラインライブが新しい現場になっているという状況なんでしょうか。

新しい現場にはなってきているんですけれども、正直なことを言うと、今までのライブツアーをやってきたことの売り上げや経済活動は全く賄えていないというのが現状です。

というのも、これまでやってきたライブツアーというものは数ヶ月かけて全国を回って数十本のライブをやっていくモデルの経済活動なんですね。

それと比べると、オンラインライブは何度もできるものではない。1回の仕事で完結してしまうという意味で、今までのライブツアーとは全く異なります。

――体験としても、ビジネスとしても、リアルなライブを代替するものではない。

今までの興行に取って代わるものではなく、新しいことができるようになったという発想が正しい捉え方なんじゃないかと思います。

やはりリアルなライブはその場の空気を肌で体感して、五感全部で喜びや楽しみを感じるエンタテインメントなんですね。

でもオンラインで伝えられるのは視覚と聴覚でしかない。感性に訴えるという部分での限界はあります。その限界の中でどう伝えるかという試みだということですね。

サカナクションの山口一郎氏〔PHOTO〕gettyimages
 

「2日間で6万人」をどう見るか

――「SAKANAQUARIUM 光 ONLINE」は2日間で6万人が視聴したということですが、この数字はどう捉えていますか。

いろんな話を聞いていると、オンラインライブの視聴者数は、そのアーティストが関東エリアでライブをやった時の動員力にだいたい匹敵するということが言われるようになってきているんです。

たとえばZepp Tokyoを1日満員にするアーティストは2500、武道館を満員にするアーティストは1万というのが目安になる。サカナクションの場合は、直近の関東エリアのコンサートは、幕張メッセで1日2万3000人のライブを2日間という実績で、トータルで4万6000人という見込みだったんです。

今回は2日間やって、1日目はファンクラブ限定でチケットを売っていたんですけど、初日は約2万5000人で、それを見た人の評判が口コミで広がったことで2日目のチケットが約3万5000人まで伸びて、合計で6万人になった。そういうところも含めて、予想以上の数字にはなったと思います。

――チケットの値段についてはどうでしょうか。ある程度の相場のようなものも生まれている状況でしょうか。

サカナクションは4000円で販売しましたが、オンラインライブの適正価格は、だいたい2500円から4000円くらいと言われるようになってきています。チケット料金としては、通常のライブの50%から70%の設定かと思います。

――ということは、ある程度の収益を見越した上で予算を組むこともできるということでしょうか。

そうなんですが、リアルライブとオンラインライブではチケットの売れ方が全然違うんです。

リアルライブの場合は発売日にバッと売れるのが通常の動きですが、オンラインライブの場合は、チケットの売り出し日はゆるやかに始まり、当日の本番の寸前まで売れていく。

それは非常に怖いことなんですね。お客さんが少ないまま本番を迎えるんじゃないだろうか?という毎日が続いて、本番日寸前になって売れ枚数が伸びてようやくホッとする。しばらく恐怖感を感じることはありますね。