サカナクション「2日間で6万人視聴」オンラインライブから見えたこと

野村達矢氏インタビュー(前編)
柴 那典 プロフィール

作品性の高いものを、最新の音響システムで

――コロナ禍を受けて有料でのライブ配信を行ったのは今年3月13日のceroのライブが最初でしたが、緊急事態宣言が明けた6月以降には本格的になり、その後は数ヶ月で多くの新しい表現が生まれているように思います。アーティスト側も今までのリアルなライブの代替ではなく、新たな表現方法としてオンラインライブに取り組んでいる方が多いということでしょうか?

そうですね。3月の段階では、本来なら通常のライブをやる予定だったものを、お客さんが入れられなくなったので、その会場を使って無観客でやるという配信が多かった。そこに課金するという発想でした。

ただ、6月以降には当初からオンラインライブをやることを目的にした配信がスタートした。中でも6月6日という早い時期にやったのがUVERworldですけど、お客さんがいないことを踏まえたライブ表現の追求がなされるようになり、そういったことを学習要素にしながらみんなが新しいアプローチや取り組み方を考えるようになっていった。配信業者からの提案もあり、今までにないオンラインライブが開催されるようになっていきました。

そういった中でのサカナクションなりの独自の表現方法として、映像作品に近い、作品性の高いものにしていこうということになった。そこで、これまでミュージックビデオの映像監督を担当してきた田中裕介氏を総合演出に迎えて、生ではあるんですが、ミュージックビデオ風の要素がふんだんに使われたものになったと思います。

音響に関しても今できることの最大限を表現したいという話があり、ドイツのクラングテクノロジーという会社の最新技術を応用して3Dの音響システムを実現することにトライしました。

「SAKANAQUARIUM 光」特設サイトより

――これは、いろんな方向性がある中のひとつの選択肢だったということですね。

そうですね。まだまだオンラインライブの黎明期だし、どういうやり方を選ぶのかは手探りの状況ですし、アーティストによって合うもの合わないものがあると思います。まだ試行錯誤の段階ですが、いろいろな可能性があることは確かです。

 

――他にもオンラインライブの表現の可能性としては、たとえばどんなことが挙げられますか?

CGを使ったり、ARのようなデジタル技術を使ったりする部分では、いろいろな選択肢がありますね。

たとえばWONKが行ったように、バーチャル空間を作って、そこにメンバーの3DCGのアバターが登場してライブをやるというアプローチもある。たとえば東方神起がやったビヨンドライブのように、AR的な演出とインタラクティブなやり取りを融合したようなものもありますね。

――たとえば長渕剛さんが行ったオンラインライブでは、巨大なLEDの画面を360度ステージの周囲に配置して、ZOOMを使ってファンと対面しながら歌うという演出もありました。

まさにそれもインタラクティブなコミュニケーションですね。アーティストごとにそのキャラクターに合った演出方法もあると思いますし、コンサートホールやライブハウスではできないことを追求するアプローチはまだまだあると思います。