【科学で検証】太平洋戦争中、日本の軍艦が次々と沈没していったワケ

設計からして、そもそもダメだった…
播田 安弘 プロフィール

したがって巡洋艦の曲げ強度を増やすには、縦隔壁を入れずに甲板と船底を厚くすべきだったのです。縦隔壁を入れたことは、平賀の致命的な設計ミスでした。縦隔壁がなかった米英の巡洋艦は、魚雷を受けても沈下はするものの、横転することはありませんでした。

太平洋戦争において沈没した日本の重巡洋艦と、その原因を表に示します。艦名を太字にしたものが、縦隔壁が原因とみられる沈没です。戦前、海軍では沈没は砲撃によるものが最も多くなると想定していましたが、それは11%にすぎず、じつに18隻中13隻、約72%が、航空機や潜水艦からの魚雷攻撃による横転沈没だったのです。

 【表】沈没した日本の重巡洋艦。艦名が太字のものは縦隔壁が原因と考えられる

 

なお、検証しきれていませんが縦隔壁は空母にも入っていましたので、同じ問題があったと思われます。だとすれば、それが多数の空母、そして航空機の喪失につながり、さらには制空権を奪われる原因ともなった可能性があります。

駆逐艦の動力系配置

もう一方の駆逐艦における問題は、平賀の設計ではありません。それはボイラー室とタービン室の配置にありました。ボイラーとは燃料を燃焼させて熱エネルギーをとりだす機関で、タービンは熱エネルギーを回転エネルギーに変えて動力を生みだす機関です。この二つは船の動力系で、いわば心臓部です。

日本の駆逐艦は、タービン室が2室連続し、そのあとボイラー室が2室連続するという基本構造でした。つまり、機能ごとに連続配置したのです。この配置では、機能が同じ2室の間に魚雷攻撃を受けたときは、両側2室とも浸水し、ボイラーあるいはタービンの機能は完全に失われます。つまり動力系が停止し、艦は動けなくなります。

【図3】駆逐艦におけるボイラー室とタービン室の配置の違い

これに対して、米国の駆逐艦はタービン室、ボイラー室、タービン室、ボイラー室と交互に配置していたため、どこかの2室が浸水してもどこかは残るので、動力は低下するものの艦は動くことができたのです。その差は生死を分けるものでした。

コストを考えれば、日本の駆逐艦のように区画ごとに機能をまとめるほうが、工事は容易で費用も安くすみました。機能を互い違いにすると、どうしても工程が煩雑になるからです。