これまでの常識は通用しない!右派旋風が世界中で巻き起こるワケ

極右に投票するようになった労働者たち
吉田 徹 プロフィール

なぜ労働者は極右に投票するのか?

日本でも2000年代の小泉政権以降、ナショナリズムや構造改革を「社会的に恵まれない層」がなぜ支持するのか、という問いが提起されている。こうした問いは、再分配に熱心とはいえない安倍自民党政権が、若年層を含め、なぜ広い社会階層に支持されたのか、という問いと地続きにもなっている。

安倍政権は7年8ヶ月にも及び、歴代最長を記録した(Photo by gettyimages)

なぜ労働者が極右に投票するのか——この問いには、多くの答えが用意されてきた。ひとつは、経済的不平等の拡大だ。格差拡大で経済的弱者は再分配を求めると思われるかもしれないが、所得上昇が見込めないなかで再分配を強めようとすれば、それは中間層を含め、税負担の上昇という所得減として認識されてしまう。だから、飽くまでも成長志向と保護主義が優先される。

 

マイノリティの社会的地位上昇による影響

さらに90年代になって、各国の社民政党に続いて保守政党もマイノリティや女性など、社会的弱者の自己決定権を支持する「リベラル化」の方向へと舵を切ったため、極右政党は再分配と労働者保護策を打ち出し、支持を集めるようになった。

マイノリティの社会的な地位上昇によって、労働者は旧来の価値観や常識の書き換えを余儀なくされ、剝奪感を抱くことになる。アメリカの白人至上主義やヨーロッパ極右が旧社会的多数派の「グレート・リプレイスメント(大々的な置き換え)」という、終末論的なスローガンを掲げるのは、故なしのことではない。

いわば、戦後社会の勝ち組は、経済と社会のグローバル化で脆弱な立場に追いやられ、彼らの声を政治的に代表するのは極右政党やラディカルな政治家以外にいなくなった。考えてみれば、国民に経済的・社会的庇護を比較的平等に分け与えてきたのは、国民国家という存在だった。