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これまでの常識は通用しない!右派旋風が世界中で巻き起こるワケ

極右に投票するようになった労働者たち
近年、世界各国で勢いを増している極右政党。その目まぐるしい伸長の背景には、リベラリズムの失調によりこれまで主に左派政党を支持してきたはずの労働者層が次々と右派支持へと回っている動きがあると、政治学者・吉田徹氏は言います。なぜ労働者はリベラリズムと袂を分かち、ナショナリズムへと傾倒するようになったのか?混迷した現代の政治状況を克明に描いた新刊『アフター・リベラル』の著者が、リベラリズムが崩壊した理由を解説します。

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右派政党に投票するようになった労働者たち

現代政治の対立軸は、何処へ移動しつつあるのだろう? 

予兆はすでに出ている。例えば、2019年のイギリス総選挙で、ボリス・ジョンソン首相率いる保守党は1987年以来となる地滑り的勝利を収める一方、最大野党・労働党は1930年代以来の少議席に終わった。

保守党党首として総選挙に勝利したボリス・ジョンソン英首相(Photo by gettyimages)

選挙の趨勢を決めたのは、労働者たちだった。彼らは20世紀を通じて支持してきた労働党を見限り、保守党に大挙して投票したからだ。コービン党首のもとで左旋回した労働党が、社会インフラの国有化、教育の無償化、富裕層への課税強化など労働者の選好に添いそうなマニフェストを掲げていたにも拘らず、である。

こうした右派政治に投票する労働者は、アメリカのトランプ共和党に留まらず、それ以前の90年代からフランスやオランダの極右政党が伸張するきっかけを作り、政治的な震源地となってきた。

 

従来の構図に変化

産業革命と続く工業社会の発展によって、19世紀後半から階級政治こそが政治的対立の土台を提供してきた。富裕層や自営業者は保守政党や自由主義政党を支持し、労働者や中間層は左派政党ないし社民政党を支持するという、お馴染みの構図だ。だからこそマルクス主義こそ、過去二世紀で最も強力かつ影響力ある思想として機能してきた。

しかし、この歴史的な政治的対立軸は、もはや後景に退きつつある。労働者層の投票傾向を測る「アルフォード指数」(労働者階級が他階層と比べて左派政党に投票した割合)は、どの国でも1960年代から急降下し、最低水準を更新している。戦後を規定した近代政治の枠組みは、すでに崩壊したのだ。