「会社作る準備してくれない?」

かあちゃんが仲間になったのは、2015年8月のことだ。
何度もバッグの試作を繰り返した末、事業化できると踏んだ千津さんは日本にいる母に電話をかけた。

「かあちゃんさ、とりあえずさあ、行政書士さんに電話して会社作る準備してくれない?」

母はすぐに動いた。会社の設立手続きだけでなく、県や国といった公の機関への助成金の申請に、資金の援助も。娘から「あれはこうして、これはこう」と指示され動く。どんどん巻き込まれていったかたちだが、「私は、とても嬉しかった。あ、私にも何かできるのかなって」。

笑顔でインタビューに答える律枝さん。子どもは全部で4人。子育てに文字通り追われていた。末子のときにPTAもできるようになって、その仕事ぶりは千津さんからみてもとても丁寧できちんとしていたのだという 撮影/島沢優子 

当時58歳。静岡市内で、単身赴任の夫に代わって姑と暮らす毎日。千津さんを筆頭に1男3女を育てたが、一番下の三女が大学に入った年だった。
「ずっとここで義母と二人で暮らすのかなあと思っていた。それが嫌というわけではないけれど、自分でも役に立つんだと自信になったんでしょうね」

自尊心を満たされるとともに、娘が人生で一番やりたかったことを手伝えることも幸せだった。アフリカの人たちの貧困、特に女性たちの自立を支援したいという娘の志に深く賛同していたからだ。
会社の名前は、律枝と千津、二人の名前を合体させて「リッチー・エブリデイ=RICCI EVERYDAY」とした。