教養から見ると、タブーも逆転する

近未来、もしくはパラレルワールドの日本を舞台にした村田沙耶香の『消滅世界』という小説では、「夫婦間のセックスはアンモラルで、子供は人工授精で授かるのが当たり前であり、婚外性愛はタブーとならず推奨され、家庭は安泰」という、不倫が逆に肯定されモラル化された世界が描かれている。

そりゃあ、小説ならではのファンタジーでしょ、などと言うなかれ。「妻や夫は家族同然なので、セックスなんて無理。セックスは恋愛で心がときめいてこそ」というのが日本人一般の本音の性愛感覚であり、この小説はそれをモラル・制度化した世界を描いているのにすぎない、ということに気づかされるだろう。

人間がより生きやすい世界をつくる決まり事が「政策」ならば、この一件荒唐無稽なモラル感とシステムの構築は政策としてアリなんじゃないか、とも思わされてしまうのだ。