SDGsはグローバルな共通目標だけれど、国や地域によって課題は違います。それは経済的、社会的な格差だけでなく、伝統、文化、風土といった暮らしの環境にも影響されるもの。日本にフィットする持続可能な社会とは? 日本人の私たちができることは?

未来のことを考えながら今を生きる人たちに話を聞く本連載「未来を考える人」。今回は、料理人・野村友里さんが仲間に会いに畑に向かいます。信頼できる素材を使いたい。その思いが共感を呼び、コミュニティができました。

未来に残したいことは何かをいつも考えている。

都心のビルとは思えないほど、緑豊かな〈eatrip soil〉のテラス。日当たりが抜群に良いので、グリーンカーテンとなるように、窓際にハヤトウリやパッションフルーツを植える予定。

長年、食にまつわるさまざまな活動を行ってきた野村友里さん。2009年にはドキュメンタリー映画『eatrip』を監督し、その後、スローフードや食育を提唱しているアメリカの〈シェ・パニース〉にて料理修行。帰国後、〈シェ・パニース〉のメンバー、日本のシェフたちと一緒に、食とアートをテーマに生産者と消費者をつなぐインスタレーション“Open Harvest”を開催した。

今でも料理業界では、あのイベントがきっかけで食材への関心を深めたという声を聞くことが多い。その取り組みを“Nomadic Kitchen”として続けつつ、2012年には、〈restaurant eatrip〉をオープン。現在はレストランを営みつつ、本の執筆やイベントの企画なども手がけている。

そんなふうに、多方面から食と向き合ってきた野村さんのなかで、フードロスの問題や食の循環など、持続可能な社会への意識が高まっていくのは自然な成り行きだった。

ハーブや果樹が茂る菜園の一角にコンポストを設置し、レストランで出た生ごみを入れて、堆肥にするための1次処理を行っている。

やがて「大切なのは土だ」と考えるようになり、グローサリーショップ〈eatrip soil〉をオープン。ここでは全国からセレクトした良質な調味料や食材などを販売しつつ、思考し、体験する場としてトークイベントなどを開催している。さらにテラスでハーブや果樹を育て、コンポストにも挑戦。そのコンポストでの堆肥づくりの際は、とある有機農業家の教えを参考にしている。

「以前からレストランから出る生ゴミを循環させたかったけれど、都会では難しかった。でもこのテラスができて、同じ思いをもっていた友人が生ゴミ運びますよ、と言ってくれて、一気に動きだしたんです」

その友人とは、〈SUNSHINE JUICE〉というコールドプレスジュースの専門店を経営しているコウ ノリさん。〈eatrip soil〉の開店以来、一緒に堆肥づくりに取り組んでいる。コウさんもまた、こだわりの食材を仕入れているけれど、ジュースの残渣の量が膨大で、捨てることに罪悪感を感じていた。

「カレーやスープ、染色に利用したりしても、まだまだある。せっかくの上質な素材がもったいなくて。これを何かにできないかと思ったら土に行き着いたんです」(コウさん)

都心から約1時間、東京都青梅市にある〈Ome Farm〉にて。野村友里さん(中)と“土”でつながる仲間たち。〈SUNSHINE JUICE〉のコウ ノリさん(左)、〈Ome Farm〉の池浦秀行さんと。

2人は現在、店から出た生ゴミを、前述の有機農業家の門下生であり、都内で農業を営んでいる〈鴨志田農園〉に運び、堆肥化してもらっている。そして、日頃から全国の生産者を訪れて交流している野村さんが、最近、親交を深めている〈Ome Farm〉もまた、同じ理論のもと、土づくりに力を入れているという。

つまり〈Ome Farm〉は野菜の仕入れ先であるだけでなく、土や食の循環の話をする仲間でもあるのだ。