SDGsはグローバルな共通目標だけれど、国や地域によって課題は違います。それは経済的、社会的な格差だけでなく、伝統、文化、風土といった暮らしの環境にも影響されるもの。日本にフィットする持続可能な社会とは? 日本人の私たちができることは?

今回は、シェフの生江史伸さんが手がけるベーカリーカフェ「ブリコラージュ」へ。材料選びからスタッフの働き方まで、持続可能な店を作るアイデアについて伺いました。

楽しみながら、ひとつひとつ。
店はゆっくりとカタチにする。

新作パンを試食中の生江さん。和やかな雰囲気でスタッフの意見を引き出す。

物腰の柔らかい人だ。ミシュラン2つ星レストラン「レフェルヴェソンス」のエグゼクティブシェフであり、今回紹介する六本木のベーカリーカフェ「ブリコラージュ」の代表でもある生江史伸さんは、日本の飲食業界のトップを走りながら、つねに地球との関わりを意識して仕事をしてきた。

「レフェルヴェソンス」は2018年にアジアベストレストラン50においてサステナブルレストラン賞を受賞。環境負担の少ない食材を選んだり、フードロスを減らす工夫をしたり、長時間労働に陥りがちな飲食店スタッフの労働環境を見直したりと、レストランからできることを、ひとつひとつ実践する姿が高く評価された。

自由な格好で働くスタッフたち。職場には和やかな空気が流れる。

2年前にオープンした「ブリコラージュ」にも、サステナブルなアイデアがあちこちにちりばめられている。まずはパンの工房から見学することにした。

「ここで焼かれているパンにはすべて国産小麦を使っているんです」と生江さん。

オープンにあたり、生江さんとパン部門を担当する大阪のブーランジェリー「ル・シュクレクール」の岩永歩さんは、一緒に北海道まで足を運び、生産者を訪ねながら、理想の小麦を探したという。

「日本の小麦はまだまだ消費量が少ないんです。生産量が少ないわけではないので、もっと食べて、農家を買い支えていかないといけない。日本は食料自給率が極めて低い国。国産の穀物を増やすことは、巡り巡って私たちの生活を安定させることにもつながります」

全粒粉では膨らまないとされるクロワッサンでも、レシピを試行錯誤し、分量の50%を全粒粉に置き換えている。素材の力を感じる深い味わい。

しかも、小麦はなるべく全粒粉を使っている。これもフードロスを意識してのことだ。

「表面を削って精麦するということは、削った部分がごみになるということ。岩永さんと北海道に行った時、彼が“この土地の風景も人も、すべてをパンに閉じ込めたい”と言ったんです。それはまさに自然の恵みを一切無駄にすることなくパンにするということ。だからこの店では、一般的には精麦した小麦粉でないと膨らまないといわれるクロワッサンにも、全粒粉をたっぷり混ぜて焼いています」