アプリで出会った男女がアプリをやめるとき

食事を終えると、二人は人気のないガーデンプレイスを並んで歩いた。

前に進もうという気が感じられないほどスローペースなのはどちらのせいなのか。離れたくない、まだ一緒にいたい。そう思っているのは直彦だけだろうか。

「夜はだいぶ涼しくなりましたね」

言いたいことは別にあるのに、どうでもいい話を振ってタイミングを測る。そんなことをしているうちに大通りまでたどり着いてしまった。

するとその時、留美が「ねぇ」と声を出して立ち止まった。

「私たち付き合ってみない?」

刹那、時が止まった。心臓がバクバク音を立てている。またからかわれているのかもと様子を伺ったが、彼女の瞳は真剣だ。

……答えならば決まっている。留美に会ったら素直な気持ちを伝えよう。直彦こそ、そう思って今夜ここに来たのだ。

「まいったな。先を越されてしまった……」

直彦は首筋に手をやり苦笑いをする。そして留美に向き直ると、彼女を真っ直ぐに見た。

「留美さん。僕と付き合ってくれませんか」

言葉にしたとき、一瞬、留美の瞳が潤んで見えた。しかし彼女はすぐさま顎をツンともち上げると、高飛車にこう言ったのだ。

「じゃあ、携帯見せて」

「携帯……?」

怪訝に思いながらも言われるがまま差し出す。すると留美は直彦の顔に画面をかざしロック解除した後、すばやい操作でマッチングアプリをアンインストールしてしまった。

「付き合うなら、今後アプリは禁止ね」

なんて言いながら、留美は悪戯っぽく笑っている。

……なるほど、浮気しないようにということか。彼女の行動が意外で可愛くて、直彦は思わず留美を抱き寄せた。

初めて触れる留美の体。柔らかく、いい香りがする。溶けてしまうような、痺れるような感覚が走った。

「アプリは見ません。もう必要ないから」

衝動のまま、直彦は頭ひとつ分下にある留美の顔を覗き込む。そしてそっと、唇を重ねた。