口に出して気づく「本当の気持ち」

駅まで見送りに行く途中、「美味しい朝ごはん食べたい」という百合の希望でカフェに立ち寄った。

モーニングが人気の店らしく朝早くから賑わっている。

「このマフィン、めちゃくちゃ美味しい〜!」

完全復活を遂げた百合のテンションは高く、油断するとまた彼女のペースに取り込まれてしまいそうだ。

直彦はゴクリと唾を飲み、覚悟を決めて口を開いた。

「あのさ……百合ちゃんに言わなきゃいけないことがあるんだ」

「実は、他に好きな人がいるんだ。自分でも気持ちに確信が持てなくて……優柔不断な態度をとってしまって悪かったと思ってる。だけどゴメン、もうこれ以上は誤魔化せない」

好きな人がいる。そう声に出した途端、心がスーッと軽くなるのがわかった。そして同時に、留美への気持ちがくっきりと形どられていく。

留美のことが好きだ。

一度認めてしまえばこんなにもしっくりくるのに、これまで何を複雑に考えていたのだろう。

どうせ自分は友達枠だとか、留美はハイスペ男狙いだとか、彼女は駐在についてくるようなタイプではないとかなんとか……そんなのはすべて言い訳だ。自分の素直な気持ちを認めてしまうのが怖かっただけだと、今ようやくわかった。

抗いようもなく留美に惹かれていたのに。そう、最初からずっと。

「……知ってたよ」

「え?」

思いがけない百合の反応に、直彦は目を見開く。

泣かれても喚かれても仕方がないと構えていたのに、彼女はどこかすっきりした表情を浮かべていた。

「だってナオさん、私と一緒にいてもずーっと上の空だった。それでも一緒にいたかったから気づかないフリしてただけ。一緒に過ごす時間が増えれば私を好きになる自信もあったし。でもその前に時間切れになっちゃったか」

……すべて見透かされていたのか。恥ずかしさで顔が火照る。小さく「ごめん」と呟くと、そんな直彦を彼女はピシャリと制した。

「やめて。謝られると惨めだわ。悪いと思うなら最初で最後のモーニングを一緒に楽しもう!」

そう言って、百合は笑った。初めて会った時と同じ好感度抜群の笑顔で。

作り笑いであることはすぐにわかった。しかし彼女らしい完璧な気遣いを、直彦は心底ありがたいと思った。