SDGsはグローバルな共通目標だけれど、国や地域によって課題は違います。それは経済的、社会的な格差だけでなく、伝統、文化、風土といった暮らしの環境にも影響されるもの。日本にフィットする持続可能な社会とは? 日本人の私たちができることは?

今回、注目したのは、プロダクトデザイナーの柴田文江さんらが提案する紙でできた蓋。プラスチックに頼らない生活は、本当に必要?と問うことから始まります。

過剰な便利さを捨て、
人を信頼したものづくりへ。

カップと同素材の紙でつくった蓋。スタッキングした紙カップが外れにくくなることに着目し、重ねた紙と紙が自然と吸い付く性質を生かして設計している。最小のデザインで目的を果たす、柴田さんらしいシンプルなプロダクト。

紙カップの縁に、すっと収まる紙製の蓋。蓋は英語で「リッド」。

2019年にプロトタイプが完成した〈スタッキングペーパーリッド〉は、プロダクトデザイナーの柴田文江さんを中心に、ファインペーパーの開発に力を入れる紙の専門商社・竹尾と、紙カップ・紙容器メーカーの日本デキシー、神保町に本店を構える「グリッチコーヒー&ロースターズ」が手探りで始めたプロジェクトだ。

きっかけは2006年のこと。竹尾が主催した、クリエイターが新しい紙の可能性を追求する展示会に柴田さんが参加し、原型となる紙の蓋を発表したことだった。

「当時はまだ、プラスチック問題が今ほど大きくは取り上げられていませんでした。日本では欧米のようなテイクアウトコーヒーの文化が広がってきて、コーヒーカップを片手に街を歩くことが、ある種のブームのようになっていた時期。

なので私も、プラスチック消費量を減らすという意識より、カップを捨てる際にゴミを分別しやすくしたい、という思いで紙の蓋を提案したんです」と柴田さん。

紙のカップに紙の蓋を被せれば、面倒な分別なしに可燃ごみとしてまとめて捨てることができる。そんな合理的な発想から生まれた作品は、十数年後、とあるきっかけで商品化を目指すこととなる。