「カフェラテ550円は高い」と叫ぶ男

「あ、俺先に飲み物買ってきてあげるよ。何がいい?」

中村知之はニコニコ微笑みながら言う。

「あ、ありがとうございます、じゃあ、カフェラテで……」

留美は目のやり場に困りながら答える。

おそらくトレーニングか何かで鍛えているのだろう。彼は逆三角形型のマッチョ体系をしているが、身体に貼りついた服がとにかく窮屈そうで、それがどうしても気になってしまう。

――なんであんなピチピチのTシャツ着てるの?筋肉アピール……?

留美はレジに向かった男の後ろ姿をまじまじと眺める。同じくピチピチの半ズボンから伸びたふくらはぎも、歩くたびに隆起する筋肉がやけに目立っている。

アプリやHPではスーツ姿の印象しかなかったため、まさかこれほど奇抜な私服姿でやって来るとは予想しなかった。

そしてカフェラテを手にして戻って来た知之は、さらに衝撃の一言を口にした。

「ていうか、カフェラテ550円って高くない!?」

「えっ……」

しかめ面で突如そう叫んだ彼に、留美は思わず絶句する。

「まぁシャレてるカフェじゃ、仕方ないかー」

けれど彼は留美の反応に構うことなく、にこやかに世間話を始めた。

ピチピチの服は相変わらず気になるが、普通に会話をしている分には感じの良い男である。しばらく平和な会話が続くと、カフェラテの件はもしや留美の聞き間違いではないかと思い始めた。

「本当にさ、コロナもいい加減にして欲しいよな。俺も基本リモートでさ、UberEATSで毎日マジで吉野家しか食べてないんだよね」

「え、吉野家?でも知之さん、神谷町に住んでるなら、他にも沢山美味しいデリバリーはあるんじゃ……」

しかしながら、ようやく会話が盛り上がり始めたところで、留美は知之の発言に再び首を傾げた。

「いやー、『配送料50円』の中から選べってなると、ノーチョイスで吉野家になっちゃうんだよねー」

その瞬間、留美は「そうなんですね」と笑顔で相槌を打ちながら、『一回目のデートは必ず昼間のお茶のみにする』というルールを設けた自分を心の中で褒め称えた。