ドタキャンの理由に怯える女

「別に凹んだりしてないから大丈夫よ。気遣わないで」

留美はシャンパンを飲み干しながら、心配そうに自分を見つめる徳光に笑いかけた。

「たぶん、本当に仕事か何かで緊急事態が起きたんだと思うぞ?真面目な男はそう簡単にドタキャンなんかしないし……」

「うん、わかってる。それよりごめんね、大雨なのに呼び出して。今日は私が奢るから」

徳光の前では少しばかり強がって見せたが、留美はかなり落ち込んでいた。直彦はそれなりに自分に好意を持っていると高を括っていただけに、まさかそんな扱いをされるとは思わなかった。

結局、楽しみにしていたフレンチの予約をキャンセルするのも忍びなく、気を紛らわせるためにも、代わりに徳光に付き合ってもらうことにしたのだ。

「でもさ、とくちゃんが『とにかく男に会え』って言ったでしょ?私、一応他にもマッチングしてる人もいるし、地道に婚活がんばるね」

「そうは言ったが……、留美、あの商社マンが気になるんだろ?もう少し粘れよ。ここぞという時は一点集中型で勝負に出るのも必要だぞ?」

相変わらず徳光は痛いところを突く。きっと彼は、留美が直彦に対して及び腰になっているのを見抜いているのだ。

ドタキャンの連絡に、留美は『了解』としか返事をしなかった。

徳光の言う通り、本当に緊急事態が起きたのかもしれないし、直彦が安易に約束を破るような男でないのも何となく分かっている。

けれど、直彦に留美より優先すべき女がいる可能性だってゼロではない。

「なぁ留美、ここまで来て逃げるなよ」

徳光の強い口調に答えられず、留美は押し黙る。

「少なくとも、一度は会ってちゃんと話せよ」

「……うん」

何とか答えたものの、自信はなかった。

気が緩むと、直彦が今誰と何をしているのか、どうしても無駄なことを考えてしまう。

するとまた傷つくのが怖くて、もうこれ以上の深入りを避けたい気持ちが勝るのだった。