竹中平蔵氏、中国社会でひそかに「大人気」になっていた

日中で共鳴する新自由主義の行方(1)
梶谷 懐 プロフィール

竹中平蔵氏、中国で人気に

スーパーシティ構想を考える上で、キーパーソンの一人が「『スーパーシティ』構想の実現に向けた有識者懇談会」の座長であり、現パソナ会長の竹中平蔵氏であることは間違いないだろう。

竹中氏は周知のとおり、「聖域なき構造改革」の旗振り役として小泉政権経済に経済財政政策担当大臣、IT担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣を歴任した。第二次安部内閣の誕生に当たっては、日本経済再生本部の産業競争力会議の民間議員ならびに、国家戦略特区諮問会議の議員として、再びその動向が日本の政治に影響を与える存在としてクローズアップされてきた。スーパーシティ構想はその国家戦略特区の「目玉」として構想されたものである。

竹中平蔵氏〔PHOTO〕Gettyimages
 

その竹中氏について筆者が以前から注目してきたのは、中国における評価の高さである。

特に小泉政権で閣僚に任命されたころから、その言動は特に中国の「改革派」知識人やメディアから常に高い注目を集めてきた。中国の代表的なIT企業、百度(パイドゥ)が運営する「百度百科(中国版ウィキペディア)」の「竹中平蔵」の項目では、彼が小泉政権時代に行ってきた様々な改革を中心に詳しい人物紹介がなされており、しかもその記述のほとんどは彼の経済改革の手腕を高く評価する内容で占められている(「竹中平蔵」『百度百科』、2020年9月4日アクセス)。

日本の著名な経済学者で「百度百科」で紹介されているのは故・宇沢弘文氏、故・青木昌彦氏、野口悠紀雄氏など数名しかおらず、いずれも竹中氏ほど詳しい記述はなされていない。さらに、彼が2007年に北京大学で行った講演録とその後の学生との対話が書籍化された『竹中平藏:解読日本経済与改革』(新華出版社、2010年)のほか、すでに多くの著作が中国語に翻訳されているほか、後述するように有力なメディアや、中国で開催された国際的なシンポジウムにも数多く登場している。

中国メディアが竹中氏を形容する際には「日本経済を最もよく知る人物」「改革の総指揮者」「経済改革の皇帝」「日本の王安石(中国宋代に大胆な改革を成功させた官僚)」「中国で最も人気の高い日本の経済学者」など、ほぼ絶賛といってよいほどのキャッチフレーズが冠せられることが多い。

周知のように竹中氏は日本において毀誉褒貶の極めて激しい人物であり、批判的なものも含めて彼を論じた書籍や報道はあまた存在するが、このような中国における彼の高い評価については筆者の知る限り日本ではほとんど知られておらず、そのことが持つ意味についてもほとんど考察されてこなかった。そこに浮かび上がった、竹中氏が旗振り役を務めるスーパーシティ構想と、その中国のAI監視社会との類似性の指摘。

これらの「点」と「点」を注意深くつなげることで、何かがつかめるかもしれない。そう考えたのが本稿を執筆した動機である。