米国屈指の「物言う株主」が株主至上主義から転向した理由

「インパクト投資」とは何か
水谷 衣里 プロフィール

例えば第一生命保険株式会社は2017年、途上国でマイクロファイナンス(小口金融)事業を展開するベンチャーに4億円の投資を行った。その後も順調に投資先を増やし、現在までに合計8社、総額25億円を投じている。さらに2020年7月には米国大手プライベートエクイティ投資会社「TPG」に約21億円の投資を決めた。同ファンドは、ヘルスケア・教育・金融サービス・再生可能エネルギー・食料/農業の5つの分野に投資を行う。また日本生命は、国内でも社会課題の解決に取り組むスタートアップ企業を対象に、約100億円を投資する計画がある。

 

野村アセットマネジメント株式会社は、2018年に「野村ACI先進医療インパクト投資」の販売を開始した。同ファンドは、革新的医療サービスの提供・医薬品や医療サービスへのアクセス提供などを目指すもので、ファンド規模は815億円に上る。また投資信託を通じて、個人投資家が少額からインパクト投資に参画することが可能となったという意味でも注目を集めた。

金融の変化は不可逆

コロナ禍の中で、インパクト投資に注目が集まる理由。そこには、経済的な成長には、SDGsの達成や、事業活動と環境面・社会面におけるサステナビリティ(持続可能性)との両立が不可欠であることが、すでに国際社会の共通認識へと変化していることがある。

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思い返せば、2008年の金融危機は、行き過ぎた金融資本主義、そして短期主義の果てに発生した。言ってみれば、金融の肥大が招いた自滅だった。気候変動の問題も、この10年で「脅威」から「現実の被害」へとその局面は大きく変わった。金融の世界も資源消費の拡大や気候変動の加速が地球環境にもたらす影響を無視できなくなっている。

冒頭に紹介したBBBやグリーンリカバリーに関する議論、欧州復興基金の創設は、コロナ禍にあっても、サステナビリティを追求する社会の変化は鈍化しないことを示している。社会の変化は金融にも変化を促している。経済の血流である金融も、すでに不可逆な変化の渦中にいるのだ

相次ぐ転向

財務的利益のみを追求する今までの金融の世界から、インパクト投資の世界に転向する例も続出している。

例えば「物言う株主」として知られる「バリューアクトキャピタル」創業者のジェフリー・アッベン氏。運用総額最大200億ドル(約2兆1000億円)の巨大ヘッジファンドを立ち上げたアッベン氏は、2020年6月、自ら興したヘッジファンドを去り、インパクト投資ファンドを設立することを公表した。